走時曲線下図作成レシピ2021年版                  2021年5月25日,26日 2022-02-04一部改訂 Y.Okamoto

地学の授業で用いることのできる走時曲線の下図を作成するレシピを下記に公開します.
なお筆者が地震学で波形解析を専門にしたわけではないので,アマチュア元教員の記載だと思ってください.
活用法は別ページ(以下URL)とします.

活用法は以下のURLをクリックしてください.
http://yossi-okamoto.net/Seagull_Lab/TT/TT-Analysis.html


※ この図の使用には下記の仮定が入ります.
1) 地下が2層水平構造をしていて,地震波速度は層内では不変.
2) 実際の地震は地下で生じているが,深さを無視して地表(深さ0)で生じたと考える.

<手法>

1.気象庁地震月報検測値値を用いる方法(筆者がかつて用いた方法.下の方の古い拙作Pageを参考にしてください)
 現在では自動検測になったためか,S波の走時のデータが少なく,ほぼP波走時オンリーの図になる.
 なお古いサイトでは,データが有料と記してあるが,現在は気象庁HPより無料でダウンロードできる.
    
2.防災科技研Hinetイベント波形を用いて,波形図を作成したり,自分で走時を読み取る方法(ここではこの手法を詳細に記載)

準備物:Windows版win2(宇都宮大学名誉教授 伊東明彦氏開発)
 ダウンロード先:http://www.edu.utsunomiya-u.ac.jp/scied/hi-net/win2/index.html
筆者は上記のLinux版(伊東氏のご厚意による)をLinuxOS上で用いているが,同様の手法でWindows上で下図を作成可能. 

Linux版の使用には

Win2をLinuxで走らせる 5/20 2021 Y.Okamoto

まずJAVA環境は以下の2つ,このほかOracleも入れたがおそらく使わず.
sudo apt-get install openjdk-8-jre
sudo apt install openjdk-8-jdk
これでJavaファイルが次のコマンドで実行できる.(win2.jarのあるディレクトリで作業を行う場合)
java -jar win2.jar


Hinetデータより走時曲線下図を作る    5/20,5/25-26 2021 Y.Okamoto

※ win2の製作者宇都宮大学 伊東明彦名誉教授から,活用にあたり詳細なご指導をいただきました.感謝申し上げます.
※ 本サイトに記載のデータや波形は防災科技研Hinetによるものです.

1) まず波形データを入手する

Hinetのページで先に,ユーザアカウント登録を済ませておく.次に下記のサイトにログイン
https://hinetwww11.bosai.go.jp/auth/?LANG=ja

イベント波形データダウンロード

より,入って日時を選択して,必要なデータをダウンロードする.最初に選択肢にある「連続波形データ」ではありません.

この際の注意点は
・浅い地震を選択(できれば10kn以内)⇒深い地震を選択すれば,浅い地震との比較もできるが.
・できればM5程度より大きなものが,長距離まで明瞭な波形があるので好都合.
・地域での違いなども研究の対象になる.

得られるデータ(.evt .ch .txt)の3種類をPCに保存する(下記保存先DataDirに指定).

2) 次にwin2で処理する(筆者はLinux上で操作していますが,Windows上でも同様にできるはずです)

win2の詳細な使い方はここでは省略します.UNIX版winの操作に似せてあるそうです.
win2のダウンロード先:http://www.edu.utsunomiya-u.ac.jp/scied/hi-net/win2/index.html

win2の準備:

まず起動後
Display⇒Options
でSystemDirからDataDirまでに正しいフォルダ名(ディレクトリ名)を入れること.これ大事!Save/Closeで保存する.
次に,地震のデータ選択はFileからではなく,SELECT⇒newからの方がやりやすい.これでDataDirに格納されているデータの一覧が表示されるので,処理する地震を選択する.
画面に次のような波形が出る.



これはHinetが予め計算した自動検測による,震源からの震央距離順に観測点の波形をならべたもの(DISTがデフォルト表示).

ここからは2つの手法がある.なお筆者の作成した両方の図は解析編の方で紹介する.


A.面倒な検測をやめて,デフォルトの自動決定の震源を用いて,Paste Up図を作成し,これを走時曲線描画に用いる

これを用いた解析は以下のページを参考にしてください.
http://yossi-okamoto.net/Seagull_Lab/TT/TT-Analysis_Part1.html

<手法>
上記画面から,PASTEボタンを押してペーストアップ画面を作成する.この際,画面表示のデータ数や最大距離をDisplayメニューから設定する.ま た水平の倍率(水色左右矢印ボタン)も適当に調整する.あとはスクリーンショット画面に必ずHinetを用いた旨を書き込んで使用する.下記に私の作成し た例を紹介する.この画像を用いた解析は別ページの解析編で紹介する.
元図のダウンロードはここから

※ Displayメニューの中に,MaxDistanceを設定するページがある.これを用いて最大震央距離や,表示する観測点数を調整する.距離は 400km内外.観測点数はデフォルトの50か増やしても100までのほうが,解析がしやすい.具体的には解析編を参考に.


B.自分で検測を行い,それで作成した走時データから走時のみを記したグラフを作成する(生徒にはこちらの方がわかりやすい)

これを用いた解析(実習)は以下のページを見て下さい.
http://yossi-okamoto.net/Seagull_Lab/TT/TT-Analysis_Part2.html

<手法>
まず上記波形でいずれかの観測点での波形をクリックすると小さな波形表示の画面が出る.この画面上でP波,S波の到着時刻(走時)を読み取る(次の動画).(このP,Sの各走時を元に,再度win2で震源決定を行い,用いるデータを算出する)

https://youtu.be/9yjLlXDcCIs

ここで,走時の読み取りをミスった場合には,すでに読み取った走時のバーを移動して,再度読み取り値を設定するか,読み取り窓の上のDELボタンで読み取り値を消してから,読み取り直せばよい.
また読み取りの難しい地点のデータは読み取らずに
スキップすることも可能.特にS波の位相は難しいので,P波のみの読み取りでもかまわない.

さらに,結果をみるためには,PASTEを操作したり,Hypoで震源決定をして理論走時とのちがいを確かめたりする(次の動画).

https://youtu.be/nGSe0ybs2XY

上記理論走時は,win2の終了処理をして再起動しないと消えないので,処理を続ける場合は忘れずにFileよりPhaseSaveを行いQuitして,再起動する.そうすると今までの処理に引き続き走時の読み取りを続行できる.
そして,最終的に震央距離400kmくらいまでのデータが完成すれば,Hypoボタンを押して(これが重要),win2を終了し,次の処理に移る.
Hypoボタンが押されると,win2のディレクトリにhpstと いう拡張子のないファイルができている.これをとりあえずコピーしてどこかに保存しておく.このファイルについて次の処理を行う(このファイルは単に読み 取りを行い位相ファイルを保存しただけではできない.必ずHypoボタンを押す.さらに稀にHypoボタン後に計算がエラーとなる場合がある.このとき は,Phaseフォルダに格納された,該当のphsファイルをエディタで開き,おかしなデータが入っていないかをチェックする.)

ちなみにこれはテキストファイルで,走時の読み取り値から新たに決定された震源からの震央距離や各走時が震央距離順に記入されてある.伊東氏によれば1行のデータ順は下記のとおり.

観測点毎の情報は,左から、観測点番号、コード、?(忘れました)、初動の極性、 pの読み取り値,?、計算値,残差、?、ー、Sの読み取り値,計算値,残差、震央距離、震央から見た方位、震源での射出角、震源球に投影した時の半径、最 大振幅から計算したマグニチュード,となっています。by Dr.Ito

268 N.KYWH  0 U   20.574  1.000   20.915  -0.341   0 -   21.881  1.000   22.196  -0.315     8.5  -79.0   28.9  0.647  -99.9

そこでこのテキストファイルから,下記の処理を行う.筆者はLinux上でawkを使っているが,表計算ソフトで上記hpstを読み込ませて,同様の処理ができるはず.

1) P波初動が明瞭で,UDが判断できるものだけを選ぶ.
awk '{ if ( $4 != "-") print $15,$5,$11 } '  hpst > test4.dat

2) あるいは,とりあえずP波初動をピックアップしたものは全部選ぶ
awk '{ if ( $5 != "0.000") print $15,$5,$11 } '  hpst > test4.dat

のいずれかをデータ数との兼ね合いで選択.

<以下表計算ソフトでの処理>(筆者はLinux上のCalcで処理しているが,Excelでも同様にできるはず)

まず上記データより,震央距離,P波走時,S波走時の3列を作成.

(80を除く処理はCalcで
=IF(C2=0,"",C2)
を列にコピー.すればよい)⇒下記の計算後にも処理できるので,必ずしも必要ない.

さらに,時間軸を経過時間(秒)ではなく,実時間にするには,win2での表示時間を画面上から求めて(上記図だと,9:10:34から図がスタートしているので)
9:10:00をどこかのセルに入れてこれを初期値とする.
時刻に替える処理はたとえば
=$A$1+Time(0,0,B3)などとする.この場合A1に上記初期値,P波読み取りの最初のセルがB3の場合.
これを全行にコピーすれば,震央距離とP,Sの走時の列が完成する.

あとは散布図でグラフを書く.完成図は次のとおり(2015年2月6日徳島県南部 M5.1深さ11km).元図のダウンロードはこちらから.



<走時読み取り上の注意点(私は波形解析のプロではありません)>

・P波走時は上下動波形(観測点記号にUの表示)でかならず,上下の表示倍率を上げてから,波の立ち上がりを読む.これはかなりの精度で読み取れる.また適宜水平倍率も上げると立ち上げりがわかりやすい.
・S波走時の読み取りはとても難しい.専門的には水平動2成分の震動方向までチェックすると聞いたことがある(つまり震動方向が震源から放射方向ではなくその垂直方向に揺れが変わる瞬間がS波の到着)が,そこまではできないので,
1)水平動で2成分の大きなゆれ(あるいはそれに先行するゆれ)が同時に始まる.
2)水平動のどちらかで,振幅の急に変わるところ
3)水平動のどちらかで,周期が急に変わるところ
などを考慮して決める(筆者の場合はかなりアバウトに決めている).あるていどS波走時(とくに遠距離)がないとS波走時でのMoho面深さの計算ができない.
さらにHypoボタンを押して,理論走時との違いを考慮することは重要であるが,理論走時に合わせて読み取り値を変更することは行わない方がよいと思う.私は極端なはずれ値を除くのに,理論走時を使うほかは.あくまで自分のアバウトな読み取り値を用いることにしている.

と以前に書いたが,教材としての使いやすさを考えて,現在は理論走時も考慮して調整している(2021年7月現在).

※ 気象庁の走時の読み取りマニュアルには,そうした注意の記載がある(P.54の留意の記載).
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/bulletin/catalog/refer/ref_6.pdf


気象庁地震月報データより走時曲線を作る(かつて筆者が用いた方法)    5/15 2021 Y.Okamoto

データの在り処
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/bulletin/deck.html

ではなく,
https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/bulletin/eqdoc.html
の「検測値」の欄であることに注意.これわかりにくい!
.txtのついた方のデータが,検測値が整理されて,震源距離が入ったもの.

筆者は,以下のようにawkで処理するが,表計算ソフトでもできるだろう.Windows版のawkはgawkが使えるはず.これらのコマンド処理は慣れると表計算ソフトの比ではない.

awk '{ if ( substr($0,10,1) == "P" || substr($0,10,1) == "E")  print $0 } '  Abashiri2015.txt > test2.dat

awk '{ print substr($0,1,6) "," substr($0,10,2) "," substr ($0,15,2) "," substr($0,18,2) "," substr($0,21,5) "," substr($0,33,2) "," substr($0,38,2) "," substr($0,41,5) "," substr($0,94,5) "," substr($0,100,5) } ' test2.dat > output.csv

このoutput.csv を表計算ソフトで処理して走時の散布図を作る.

なお筆者の古いページ(2010年ころに作成)は以下のとおり(記述が旧地震月報のフォーマットなので今は使えない?)

http://www.yossi-okamoto.net/2010_Study/travel-time.html

さらにこの頃に地震月報(当時は有料)から作成した1995年兵庫県南部地震の走時元図はこちら
数年前まで大学の「固体地球科学II」という授業で使用していた.



Copyright(c) by Y.Okamoto 2021, All rights reserved.