2019年KVIS写真日記その3  2019年10月21日公開
Facebookで公開しているKVISでの写真日記を少し編集して,こちらでも公開します.

その1はこちら
その2はこちら

今年はKVIS滞在中の,例年あった教師向けのWS(ワークショップ)はなく,その代わりにアドバイザのT先生に頼まれたHome School Studentsへの特別授業が土日の連続2週にわたりありました.公教育ではなく,自宅を中心にした自分たちでの勉強を志向する生徒たちへの特別授業で す.中学生くらいの年頃ですがこれがとても賢い生徒たちで,驚きました.ただこれ,なかなか大変で今回はこの準備に追われました.最初の週は土曜日が天文 で日曜日が地震.次の週は土曜日が野外実習で日曜日が地質,地史の勉強となりました.それではFBでは扱わなかった後半の土日部分を中心に少し写真で紹介 します.
1566868716858.jpg 1566868721215.jpg
以前に偵察していた,論文になっているサイトを生徒+親引率で訪ねました.
親御さんが車を提供しました.
1566868727738.jpg p1060542.jpg
アドバイザのTの先生から趣旨説明.一番右端が親の会の代表の大学院大学の物理のR先生.
HS野外研修で訪れる予定の露頭の1つ前に,下見で見つけた礫岩の露頭に先に立ち寄りました.ゴム林にするために整地して苗を植えた場所の端に露岩が出ている場所を偶然見つけました.
p1060547.jpg p1060548.jpg
初めてハンマーを使うHSの生徒たちに,ハンマーの使い方から教えます. なかなか見事なDebris Flowのような時代未詳の堆積物.礫にはチャートも含まれますが,放散虫は肉眼では見つかりません.この礫岩どこにも記載がないようで,きちんと調べれば論文になるかも知れません.
p1060538.jpg p1060552.jpg
さてこちらが目当ての露頭です.KVISから車で1時間の距離です.2年前に偶然通りかかってみつけた場所ですが,熱帯で風化が激しいこのあたりではきちんとした地層が残っている古い石切り場です.ところが調べるとちゃんと筑波大の先生が論文を書いていました(Sashida et.al.2000).入手しにくい文献なので著者から直々に送っていただきました. シルト岩と泥岩の互層.シルトはところどころ礫を含む粗粒な部分も見つかります.論文の記載と比較するのですが,論文の記載場所はすでに削られたのか,あまり観察と記述が合いません.
p1060559.jpg p1060564.jpg
こちらはやや粗粒な部分です.下方が上位にあたるようです(論文記載と粒度の変化からの推定).この場所で生徒に基本的な地層の見方の話をしました.あまり暑くなく観察にはちょうど良かったです. こちらはタービダイト状の構造が見れる泥岩です.さきほどの互層の上位にあたるようです.右側が上位のようで逆転しているように見えます.生徒に色々と質問されました
p1060574.jpg p1060578.jpg
論文記載のペルム紀末期の放散虫を含むという黒色チャートを探していたのですが,露頭観察の最後にやっとそれらしいものを見つけました.かなり風化しているようですが,塊状の部分を持ち帰りました.肉眼的には放散虫は難しそうです.それよりSashida論文にはこのチャートのすぐ上位にP/T境界が来る可能性があるとほのめかしています.それが本当なら,ジオパーク並みの素晴らしい場所になるのですが,さて. 午前の露頭観察に続いて,午後は露頭から30分ほどの距離のKlaengにあるDMR博物館(タイ地質調査所が運営)を見学しました.最初に庭で途中のコンビニで買ったサンドイッチなどのお昼ごはんです.
p1060594.jpg p1060595.jpg
地方の地質博物館ですが,我々が熱心に見ているので博物館のスタッフが写真を撮りにきました.展示を前に熱演するVISTEC(KVISの隣にある大学院大学)の固体物理のR先生(HS活動の責任者です).私の研修でも拙い英語をそのつどタイ語に翻訳してくれました. さて内部の見学を終えて,外の庭にある岩石園の見学です.これは礫岩.
p1060608.jpg p1060610.jpg
続いて,2年前にも見たシアノバクテリアのコロニーであるストロマトライトです.
こちらはペルム紀の見事な長細いフズリナ.パラフズリナでしょうか?
p1060612.jpg p1060615.jpg
恐竜の足跡もあります.タイは結構恐竜の足跡化石が有名です. まだ熱演するR先生.このようにして土曜日の研修は終了しました.このあと翌日の日曜は私が6時間かけてフズリナと放散虫,火山灰の観察,岩石薄片の観察を講義してやっと延べ4日間にわたるボランティア講座が終了しました
img_20190824_152335.jpg img_20190824_152802.jpg
そのあと,どうしても夕食に招待するといわれて,ラヨーンの海辺の食堂に入りました.トムヤンクン辛かった!
ビーチは夕暮れで美しい風景.
1566868763928.jpg 1566868781636.jpg
翌朝日曜日は,まずはキャンパス内の岩石探し.最初に石灰岩を集めます.
石灰岩の塩酸実験とか,テラロッサの話とかをR先生がタイ語に通訳してくれました.
1566868787877.jpg 1566868825644.png
こちらは塩酸処理した炭酸マンガンノジュールの放散虫を見ているところ.
SEMの画像はすでに先週にT先生が見せてくれていました.以上が特別授業の報告です.


こちらに来てから3週間が過ぎようとしています.KVIS滞在もあと1週間となりました.その後は別の学校に仕事で移動します.
 今週からは男子の軍事訓練も始まり,午後は授業がなくなりましたが,相変わらずの自転車操業で,バタバタしています.一昨日の夜に中間テストを行ってさ らにその採点に2日かかりました.今日は朝の授業のあと昼を食べるのを忘れて採点していました.こちらの採点はとても面白いのです.まず正解には丸をつけ ません.チェックマークだけです.×はむしろ正解としてチェックしたという意味にすらなります.答案に丸をつけるのはこの答は何?みたいな意味があるそう です.面白いですね.他の国のVisiting teacherにも聞きましたが,どうも日本の正解に丸をつける採点スタイルが他国とは根本的に異なる特殊な方法なのかも知れません.こんな事実はどんな 教育関係の本にも書かれていないような.それでは少し写真を紹介します.

img_20190820_090555.jpg img_20190820_091436.jpg
今週は軍事訓練が始まり,男子生徒はごらんのような軍装です.早朝7時半からの午前の授業4時間のあと,昼食を取りすぐにバスで演習場に毎日向かいます.この日はたまたま学校に滞在しているロシアの女子高校生と英語の女性の先生が授業に参加してくれました.ピンクの服の先生はとても若く見えて最初生徒と間違ってしまいました(汗) 生徒のノートですが,とてもきれいに素晴らしく描いてくれています.これは地質構造のところの授業です.これあとでコピーをもらいたいと思っています.一応ちゃんと授業をしているでしょう!
img_20190821_200918.jpg img_20190820_184825.jpg
こちらはAuditoriumという講演用の大会場ですが,夜7時半から地学の中間テストで借りています.夜のテストになるのは軍事訓練が終わってから行うためです.高3の生徒全員が参加して1時間のテストに取り組みました.化学の先生が手伝ってくれています.全寮制ならではの風景ですね. ある日雨の中をピザを買いに行きました.ピザ好きの私は外国といえばピザです.アフリカのザンビアの首都のイタリア料理店で食べたピザも忘れられません.
http://yossi-okamoto.net/Old_HP/Futen/Zambia/Zambia_2.html
img_20190820_184836.jpg img_20190820_184811.jpg
自転車が2台あるのは店の中にいる琵琶湖博物館を退職されたK博士が一緒に行ったからです.今週から合流しています.やっと日本語で話せる環境となりました. 昨年はなかったとても瀟洒な室内の店ができていました.この店の主人は実はバンコクのさる有名なレストランのシェフだったそうですが,田舎に戻ってピザ店を開業したとか.美味しいのも当然か.ピザ1枚の値段は150から250バーツととてもリーズナブル.都市の大型スーパーに入っているチェーン店の半額程度です.円への換算は3.5倍してください.
img_20190820_184725.jpg img_20190821_164132.jpg
店のロゴデザインもなかなかきれい.実はもうテーブルの上に焼きあがっているのですが,外が大雨でしばらく雨宿りです.ー 場所: Pizza Na Ban さて1週間以上前にスーパーで買ったマンゴーをついに食べることに.
img_20190822_162547.jpg img_20190822_065658.jpg
お世話になっているT先生からなんかおすそ分けをもらったので,マンゴーと並べてみました.お菓子はとても甘いのでそのまま冷蔵庫行きです. こちらは近くの市場でかったなんかザクロみたいな果物ですが,どう食べるのかがよくわからない.
img_20190821_131621.jpg img_20190822_163308.jpg
こちらも有名な果物ですが,ちょっと名前を忘れてしまった.これもとても上品で美味. こちらはあまりの臭いに写真がぼけてしまったドリアン.冷蔵庫中がガスのようなにおいになってしまったので,あわてて実だけラップで包んでいます.
img_20190822_173850.jpg
昨日行った露店市場の食べ物.とてもきれいに揚げてくれます.次の動画をどうぞ. なかなかの手さばきでこのあと,スキムミルクと砂糖で味付け.これがまた油をなじんでとても美味.袋いっぱいでわずかに20バーツ.約70円と格安.この操作をちょうど2回分です.
img_20190822_180521.jpg img_20190822_181216.jpg
袋に入ってたのをKさんと分けました.ごはん前にちょっとつまんだのですがあまりの美味しさに全部平らげてしまいました. こちらは学校の周回道路脇で始まっている土木工事.おそらく開発中の区域への上下水道の工事だと思うのですが.いつも周回道路をエクササイズで軽く走っているのですが,夕刻6時を回ってもまだ工事が続いています.学校の校舎の工事もその時間も続いています.まあ夕方の方が涼しくなるので工事がはかどるのかも知れません.
img_20190823_162133.jpg img_20190823_165853.jpg
以前にホームセンターで格安で買ったRYOBIのベンチグラインダーの岩石切断機への改造計画.とりあえず今年は片方の砥石を外して,図面を作るところまで.モンキーレンチを技術のN先生に借りに行ったらこんな立派なものを貸してくれました.これ良さそうなのでAliExpressで探してみます.(追記.探したのですが,どうも英国を中心に売っているメーカーのようで,見つかりませんでした.しかたなく代替品を注文しました) 砥石を外して軸だけにしたところ.各部分の寸法を測って日本に帰ってからタンクや刃を取り付けるアーバーを作ってしまおうと思っています.25cmダイヤモンドソーは格安の1200円.驚くべき安さ.もちろんAliExpressからタイへ直送です.
img_20190823_203717.jpg
各部分の長さをプラスティック定規で測って大体の図面を作りました.これをもとに日本で各部品を作る予定です.

以上で,今年のKVISでの仕事は一部を残して無事終了しました.ここからは新天地に向かう旅が始まります.
KVISを朝授業を2コマ済ませて,すぐにバンに乗り込み北東へ向います.北東部イサーンへの境界となる山岳地帯の国立公園を越えて,5時間近くのドライブでついたNRRU(Nakhon Ratchasima Rajabhat University)です.ここで着いたあくる日の日曜日に午前午後で5時間ほどの講座を頼まれました.

img_20190825_202858.jpg img_20190826_122554.jpg
Home School Studentsへの特別授業のお礼に親の会からいただいた記念品.
何かと中を開けたらポロシャツが入っていました.しかしアドバイザのT先生によるとこれはとても貴重なもので胸のリ後は王女が設立した企業のものとか.とても尊敬を集める服だと聞いた.
img_20190825_224645.jpg img_20190826_144858.jpg
これはそのHSの女生徒の1人からいただいた手作りのクッキー.後半のMukdahanの1ヶ月で半分食べて,半分は日本に持ち帰りました.とても美味しかった.
これ一昨年,カンボジア国境に近いサファイヤ鉱山の道路で拾ったかんらん岩のXenolith.今回持ち帰ることにした.とても重い!
img_20190826_150827.jpg img_20190830_115007.jpg
昨年から使わせてもらっている空き部屋に置いた荷物.来年も役立つのだろうか?(来年の仕事は確約されていはいない).
さて,8月30日(金)昼前,授業を終えて,慌ただしく学校のバンでWS(学生向けワークショップ)を頼まれたNRRUへ向けて出発.4時間半の予定だが.
img_20190830_121154.jpg img_20190830_150142.jpg
時間がもったいないのでカウンターパートでWSの通訳をお願いしている,いつものTさんが車で食べる昼食を買ってくれました.
車は一路北上,タイの東北地方イサーン(コラート高原)の入り口にあたる,ナコーン・ラチャシマを目指します.WSの大学もこの街にあります.イサーンは2回めですが,飛行機を使った前回の恐竜巡検とは全く異なる入り方をします.

1567063047747.jpg
何とかナコーン・ラチャシマ大学について,水生プランクトンの専門家K先生は早速現地の池のプランクトン調査です. 何か立派なWSのポスターが作られていました.
img_20190830_195326.jpg img_20190830_204225.jpg
夜は街のショッピングセンターのレストランで豪華な夕食をいただきました.
イサーン料理は辛いのが特徴とか.うーん確かに辛い!
img_20190831_091232.jpg 1567246396542.jpg
学生さんがWSの開会式を待っています.
大学の偉い先生方とセレモニーを待ちます.
1567246382464.jpg img_20190831_155029.jpg
こちらはK先生のWS.池のプランクトンを取って観察しました.
私の方は残念ながら記念写真だけ.カウンターパートのTさんは学部時代の出身大学だっただけに,思い出もひとしおだった様子.この大学に来れて良かった.しかし,この怒涛の移動を含む1週間は本当に疲れました.
img_20190831_200106.jpg img_20190831_202553.jpg
夜は招待されてディナーです.町で一番のレストランだそうです.翌日訪れる博物館の先生とスタッフの方とお話ししました.スタッフの女性は英語が堪能で,このあと深夜にインドネシアに世界ジオパークの会議で出発するそうです.コラート高原を世界ジオパークにする構想が進んでいるそうです.彼女とLineを交換して,ほろ酔いで外にでるとステージで音楽の生演奏をやっていました.ー 場所: ถนนยมราช โคราช
そのあと町の中心にある,昔の戦争での女傑像のある場所に出かけました.結構人気がある場所だそうです.ラオスの侵攻から村を謀略を駆使して守ったジャンヌダルクのような女性だそうです.
img_20190831_203116.jpg img_20190831_172313.jpg
賑やかな地方都市ですが,東北地方へのゲートウエイとなる町だそうです. 記念品としてもらった凄い豪華なコーヒー茶碗.

ということで,2019年KVIS編はここで終了とさせていただきます.翌日Mukdahanに入る前に,まだコラートの化石博物館を訪ねるのですが,それはMukdahan編でご覧ください.ながらくごらんいただきありがとうございました.


Copyright (C) 2019 Yoshio Okamoto, all rights reserved.