Q2 The Big 5 Geo Safari report(Part_2)                                           21.Aug.2002

31th July
 巡検3日目.いよいよ今日は念願のダイヤモンド鉱山(Big5その3)とあって朝から皆意気軒昂.しかし,朝食はなぜか昨日までと異なり早朝ホテルで取る.
 首都PretoriaのProtea Hotelを7時出発.各国の大使館等が並ぶ官庁街は掃除も行き届いてきれいな町並み.首都の東30kmのCullinumにある De Beers社のPremier Diamond Mineをたずねる.筆者が自宅を出る際,くれぐれも家人に言われたのが「是が非でもダイヤモンドをもらってこい!」ということでがぜん気合いが入る.
 
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早 朝の首都プレトリア.南アフリカの諸都市はヨーロッパのイメージと旅行ガイドには書いてあるがそのとおり落ち着いた街なみ.それでも昨夜Hotelで夜, コンビニを探してちょっと外出しようとフロントで聞くと店はみんな7時までに閉まりましたよとの返事.やはりここも夜は限りなく怖い街なのです. 伝説の巨石カリナン・ダイヤモンドの鉱山の豪華な事務所の建物に入り,まず例によって鉱山の専門家から説明を聞く.
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キンバーライトの貫入構造が手に取るようにわかる. 見学者のためのゲストハウスの入り口.看板がちょっと誇らし気.
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さすがにこの日はみんな説明を聞き漏らすまいと熱心なのですが,私は例によって英語が,−−−. 坑内の様子.歩いてどんどん奥までいくのですが,残念ながら切羽までは行けなかった.
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あれーサンプリングは絶対禁止のはずなのに何でこんなところに,手頃なキンバーライトの塊が−−−.あれーあのカナダ人の女性地質学者脇目もふらずにたたいているよ.いいのかな?みんな殺到して破片を舐め回しています. 坑道内での筆者.このあと,切羽を見せてもらう予定はなぜかエレベータが故障で下に行けず,時間切れで中止となってしまい残念.それでも世界1のダイヤモンド鉱山の坑道に生きているうちに足跡を残せたというだけでも,本当に感激でした.
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地上で見たビッグホール.有名なキンバレー鉱山のものよりはるかに大きいそうです. ビッグホールを横に見て,鉱山の施設を横切ります.
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ダイヤモンド展示室には有名なカリナンダイヤのレプリカ(残念!左上隅)がありました.大きい!他は歴史上有名なダイヤのこれもレプリカです. も うひとつこういうのも見て,せいぜい目を肥やしました.この後本物のダイヤモンドのお店も見学者用にちゃっかり用意してあります.くだんのUAEの彼はそ こで長時間粘って結構高そうなのを買ったそうですが,私は当然家人との約束を反故にしてしまいました.まあみるだけで十分.

さて,後ろ髪引かれる思いでダイヤモンド鉱山を後にした我々はそのあと,昼食を取り,一路高速道路を100km東へ飛ばし,午後の訪問地Witbank coal fieldのMiddleburg mineを訪ねる.ここはプレカンの地層をほぼ水平に広く覆う新しいKaroo Supergroup(3〜1.7億年)の広大な石炭層を露天堀りしています(Big5その4). しかしダイヤモンド鉱山でリフトの待ち時間に食われたため,ちょっと時間が押し気味で夕方が近くなり,しかもこの日は旅行で一番寒い日.くだんのカナダ人女性はあろうことか半パンでホテルからバスにのったため,炭田では寒い寒いと震えていました.
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炭田までの風景.どこまでも地平線は水平で,道路もまっすぐです. 炭田の中の風景.実は炭田の事務所で説明を聞いてバスに乗ってから,さらにかれこれ1時間近く走らないと見学の露頭までたどり着けないのです.何という広さ.向こうの人はドイツより広い(炭田の大きさが)とか言ってましたが,あながち嘘でない?!
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露天堀りのスケールに圧倒されます.地表付近の茶色い表土を除いて,黒い部分は全部石炭!
(後から調べると石炭層はやはり幾つかの黒い層だけのようです).5時から発破が行われるというので,みんな寒風吹きすさぶ中,それを待ちました.
石 炭層のクローズアップ.それにしても壁は遠い.時代はpermianのもののようです.Jurasicと説明では言っていたのですが,あとで文献を見ると そう書いてあります.また,ここの石炭は南アフリカの火力発電の源です.ただし,permianの寒冷期に堆積したので石炭としてはあまり高級ではないそ うです.
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露天堀りのサイトへの進入路.発破のサイレンが鳴り響いて,警戒を告げるパトカー?が走って行きました.発破を待つ間せっせとサンプリングしたので手が真っ黒になりました. 寒い中,発破を待つ見学者.まだかまだかと待つのですがなかなか始まりません.そして発破のシーンはビデオでタイミングが合わず痛恨の撮影ミス.この借りはやがてこのあと取り返すことになります.
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炭田のそばで寒風に震える筆者 この日の宿舎Protea Witbank Hotel.閑静でなかなかいいホテルでした.

この日は炭田のレストランでバーベキューディナーとなり,何かゲームミートと言われるサファリで見るような動物の色んな肉がでていたのですが,肉が あまり好きでない私はベジタリアンになってました.ワインを飲んでコンゴの地質の専門家と話しました.コンゴの名が付く国は2つあってrepublicの 方だと言ってました.旧フランスが宗主国であまり英語が得意でない彼とはなぜか息があいました.でも話が国内の鉱産物に及んだとき,重要な金は内戦中の戦 場にあるのだと彼の顔が一瞬曇ったのが忘れられません.

1st Aug.
 巡検4日目.今日はクロムの日(Big.5その5)
 巡検2日目にはるか西の方で見た,Bushveld Complexのクロム層が盆地状にヨハネスバーグやプレトリアの下を通って東端で顔を出すというとてつもないスケールの話が本当にありました.こんな四国の面積の2倍ほどあるという巨大な層状の貫入岩体 を想像してみて下さい.その東端のクロム鉱山と露頭を訪ねます.その前にちょっとバナジウムの鉱山の前に寄り道します.
 
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朝飯前の寄り道です.Xstrata's Vantech Vanadium Mineという鉱山の入り口付近です.マグネタイトからバナジウムを取り出しているそうです. 入り口の前にこんな巨大なmagnetiteのサンプルがでーんと置いてありました.くだんのカナダ女性はじめ,何人もがこの石と格闘してました.私は後ろからそっとおこぼれに預かりました.見るからに硬そう!
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この白い部分は何とかと誰かが何とかと説明していましたが,聞き取れませんでした. こんな風に銅をふくんで緑色になった部分もあります.
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みんなが引き上げようというのにまだ格闘していうのは東大の若きeconomic geologistのIさんです.彼とは巡検中ずっと部屋をshareしてもらったり,私が聞き取れなかった英語を教えてもらったりと大変世話になりました. 例 によって,朝飯をぱくつきながらクロム鉱山Dwars River Chrome Mineの担当者の説明を聞きます.ここは最も新しい露天掘りのクロムの鉱山で,LG6という番号の平均1.86m厚のクロマイト層を主に採掘していると いう.ここは白金などの副産物ではなく純粋にクロムを採掘している.
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露頭で説明を受ける我々.今朝から珍しく空は曇っています. きれいに層状の黒い層が見えるがこれは上の層準のMGなんとかで,実際はグラウンドレベルに落石等で隠れているLG6層を掘っているようだ.
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層状の貫入岩体の内部構造がきれいに出ている.しかしこんなものが東西300kmも離れて連続していうというのはちょっと信じられない(最近の物理探査ではヨハネスバーグあたりの地下には見あたらないという調査結果もあるそうだが). 例によってサンプリングにいそしむ参加者達.手前の巨体躯はロシアかウクライナからの人だったような.
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鉱石を運ぶ巨大なダンプカー.このあたりは昨日までと一転して山がちな地形に変わってきました. ボーリングコアに手を伸ばす,巡検リーダーのGavin氏.撮影やサンプリングに負われ遅れがちな我々をやんわりと急がせるテクニックはさすが.
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黒い部分がクロムを含んだChromite層です. 昼食(というかブランチ)をとったハウスの外の大きな樽型の水槽に日本の錦鯉が飼ってありました.長身のアフリカーナのバスの運転手がCarpといわずKoiと呼んでいました.

さて,この後,少し離れた有名な層状のクロマイト層が見られるDwars River UG1 chromitite layersを訪れます.
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道路から少し入ったところに小さな川がありその両岸に見事な層状構造が現れます. 逆からみた方がわかりやすい.クロマイトの黒い層が両岸に続いているのがよくわかります.
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滝の上の部分ではクロマイトがさらに薄い何枚かの層に分かれています.これをマグマの結晶分化作用と混合作用で説明するのは至難の技のように思われます. くり返しますが,決して堆積岩の地層ではありません.火成岩のこのような層が数100kmに渡ってあたかも堆積盆のように連続しているわけです.
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次の目的地Pilgrim's Restに向かう車窓からの山々にTransvaal SupergroupのQuarzite層がくっきりとその姿を見せる. これもそうで,いずれも進行方向(東)に対して後ろ(西)に緩く傾いているのがわかる.
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遠くの山もそのトレンドでケスタのような地形を見せる. かつてのGold Rushのモニュメントとしての村Pilgrim's Rest.瀟洒なレストランや土産物やが並ぶ.このあと有名な侵食地形のBryde River Canionを通って欲しかったのだけれど,時間の関係で他の道を通ることに.私はこの店の前でナッツの袋を頭に載せて売りに来た村のおばさんから10Rでカシューナッツやくるみなどの香ばしいナッツの袋を1つ買いました.
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学 生さんはお腹がへってここで,ごらんのような美味しそうなピザを注文していました(この日はクロム鉱山での簡単なブランチだけで昼食が出なかった.しかし 英語の不得意な私はその案内を不覚にも聞き逃してしまった).南アは食事などが日本の半額程度と格安なので助かります. Pilgrim's RestからあとはBryde River Canionほどではないものの,このような見事なEscarpmentの地形が続きます.Transvaal SupergroupのQuarzite層と言っていたように記憶するのですが.私は思わず三重県名張市の奥の香落渓の地形を思い出します.
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これもそう.傾斜は基本的に堆積盆の中心であるヨハネスバーグやプロテリアの方を向いているはず. これもそうです.Low veld(低地)に向かってバスはどんどん標高を下げてきます.
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本日の宿泊はParaborwaの街のImpala Innというprotea系列のホテル.ここもなかなか良かった.しかし標高が低くなった分だけちょっと暖かくなってきました.ここまで雨は一滴も降らず.今朝をのぞいてずっと快晴の冬の気候です. 南アフリカのコインです.右に行くほど高額のもので右から5,2,1Randです.RANDの下はcentになります.図で左の銅貨はすべてcentで,左から10,20,5,50centです.


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