Q2 The Big 5 Geo Safari                                            20.Aug.2002

29th July
 巡検初日,金鉱山(Big5その1)
 早朝,暗いうちにホテルを出発.きれいなヨハネスバーグの夜景をみながら,別のホテルにメンバーを乗せるため立ち寄ったあとヨハネスバーグの西 約70kmのAnglo Gold社が経営するMponeng Mineにほどなく到着.コーヒーとサンドイッチの軽い朝食をとりながら,早速Lecture.坑内応力の集中のため,M3〜4地震がときどき起きるので Seismic Networkで記録しているとのこと.着替え室でパンツまで鉱山提供のものと着替える.この理由はやがてあとでわかる.つなぎの服とちょっと大きめの ブーツ,慣れないヘルメット,重いバッテリに繋がるヘッドランプを受け取る.このあと2グループに別れ,別々のシャフトに見学で入構することになる.我々 はバスで連れていかれたTAU TONA MINEの方に入る.もうひとつのグループはMPONENG MINEだった.
 もらったパンフレットによると,主な鉱脈は地表下2110mの位置のVendorsdorp Contact Reef(VCR)と3476mのCarbon Leader Reef(CLR)の2つあり,我々が行ったのは後の方だと思う.いずれにせよ世界でもっとも深い金鉱山の1つとのことで暑さと湿度に閉口しましたがよい 経験でした.それにたった1つですが良いサンプルをもらうこともできました!なお,地表下といっても地表がすでに1500m以上の標高があることに注意. 金の鉱脈というと砂金が点在するのを想像するが,残念ながらここのものはpyriteの結晶の周りに金粒が顕微鏡サイズでくっついているということで,肉 眼で金色に光るのは残念ながら黄鉄鉱で金そのものではありません.またサンプルは現在,船便で日本に向かっているはずでそのうち写真をアップします.
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慣れない服がちょっとぎごちないのですが,竪坑のエレベータを降り,長い水平のトロッコ列車に載ったあと,さらにかなりの距離を歩きます.坑内は けっこう暑く,湿度があってレンズが曇りました.途中休憩所のようなところは冷房も利いて,休んでいる人もいましたが,他はやはり地中のむーっとする熱気 です. 切羽へはこんな狭い場所をくぐって登っていきます.地層の傾斜にそって傾いているのがよくわかります.服はそこら中にこすれてもうどろどろです.私は何とかビデオとデジカメを巡検バッグにいれ交代で撮影して行きました.切羽で削岩機を使う大きな音が響いています.
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このあたりがターゲットのCarbon Leader Reef?の鉱脈か?ここまでくるのに暑いし,横から水をかぶってパンツまでぬれるし,傾斜も大きく,坑道は狭いので本当に苦行でした.あらかじめ巡検のパンフにfairly strenuosと書いてあった意味がよく解った.初めての金鉱脈を見るという実感より早くここを抜け出して地上の空気が吸いたいというのが正直な実感だった. これは別の角度から.サンプリングは禁止と聞いていたが,前の人がつかえていて,降りるまで時間待ちの間に,案内してくれた鉱山の人がここでちょ うど切羽の石を手ではがして無言で渡してくれた.ラッキー!あとから専門家のI氏に聞けばずいぶん良い部分だとのことで,宿舎で彼に半分差し上げる.
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オレンジのホースは削岩機に空気を供給する?もっとも掘り込んだ部分がReefの位置.ここでも必死でビデオを構えていました.同じようにビデオ カメラを持って入ったナミビアの鉱山地質の専門家の女性は結局ビデオを取ることができなかったということで,私はビデオをダビングして渡すことを約束. これ結構向こう側に傾斜した場所で,切羽の位置からおそるおそる下るのもほとんど命がけ.落盤防止?の木の柱が何となく怖い.くだんの係りの案内者は身体が大きくここを抜けるのに四苦八苦していた.
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鉱山の事務所に戻りシャワーを浴びて元の服に着替える.全身,汗と出水や土埃で汚れていたので助かった.鉱山の全体の様子を示すジオラマ.竪坑が深いのがよくわかる.また地下に2枚鉱脈がある様子が書かれている. 鉱山の事務所内にある立派なBarで昼食兼休憩をとる.アルコール飲料は有料と聞いていたので,ここではコーラを飲んだが,欧米からの連中はビー ルを飲む飲む.結局ここで大レストを取ったあと,だいぶ遅くなって午後の日程に出発した.もうひとつのグループはたっぷり歩かされたと疲れた様子.アル コールを飲んだ連中が支払った形跡はなくすべて鉱山持ち?さすが金鉱山!

さてちょっと長い休憩を取りすぎて,今日のうちに次の目的地ヨハネスバーグの北西約100kmのラステンバーグ近郊のホテルまで着くのかと 心配になってしまいましたが,長いバス旅の果てに夕方に着きました.途中Transverg SupergroupのQuarziteのEscarpment(崖)が美しかったのですが,残念ながらビデオのみで写真はありません.このようにして巡 検第1日目は無事終了.サンシティ近くのホテルに泊まりました.ちょっと西部劇に出てきそうなたたずまいのホテルでした.
 
30th July
 巡検2日目,白金鉱山(Big5その2).
 今日も朝食抜きで出発.南アフリカでもっとも有名でユニークな貫入岩体Bushveld Comlex(20億年前貫入)の中の代表的なRustenberg白金鉱山を訪れる.鉱山の入り口でバスが線路の高架下をくぐり抜けれず路線を変更する ハプニング.Anglo Platinum社の立派なスポーツセンターのホールで軽食兼説明を受ける.宣伝ビデオをまず見る.polution,safetyなどへの対策と配慮, HIV対策への貢献などが大きく取り上げられている.巨大な層状マグマの貫入過程で分化により濃集するクロムと白金を採掘する.昔Bowenの結晶分化作 用の授業でならったような記憶もあるが,−−−.おそらく高校地学の教科書では正マグマ鉱床に分類されるはず.UG2(クロムの濃集層に下から番号がつけ られている)層,Melensky Reefなどが主たる鉱脈.Bushveld ComplexがBason shapeであることなど技術的な説明がこのあとなされた.我々はこのうちUG2の白金採掘を見学することになる.昨日と同様つなぎ,ブーツ,ヘルメット 等に着替えるが,腰に吊るすランプのバッテリがことの他重い!また耳栓を渡される.
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まずは南アフリカの夜明けから もうひとつ夜明けシリーズ
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これはMelensky Reefの鉱石.コインの部分の黒い脈に白金が濃集. 構内の風景.例によって無茶苦茶広い.破砕機かな?
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処理施設のようです. 例によって入坑服に着替えたところ.腰が不格好にふくらむのはバッテリをぶらさげているから.
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手で示している黒い線がクロムの濃集層.白金があるのか?この方は九州大学大学院資源工学の先生S氏(中国の方です).日本語で話していただいたので助かりました. 坑道内の休憩室で説明を受けます.
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クロムの濃集した黒い層(下側)と斜長岩(anorthosite)の白い層が交互になっているのがわかります.黒い層の中に白金が? 目的のUG2の切羽です.黒いchromiteが粉になっています.天井までの狭い空間で掘削が行われています.轟音が響き,耳栓を渡された理由がよくわかりました.
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狭い空間でサンプリング中です.でもここのサンプル何せクロムと白金(そんなにたくさん含まれてませんが)で重くて−−−. 母岩のハルツバージャイトのクローズアップ(2019年5月6日追記.たぶん違います.Noriteではないかと)
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坑道内の壁に分化作用に伴う層状構造がよく見えます. これも層状構造
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我々を運んだ竪坑のエレベーターの全景です.どの鉱山でもこれに乗って地下に降りるのですが,何でも40Kmくらいの猛スピードで降りるそうで,中にいると猛烈な風切り音がしてちょっと不気味です.何となくゲームの「Half Life」のシーンを思いだしてしまいます. 鉱山のスポーツセンターで豪華で美味しいバッフェの昼食.今日はビールを飲むぞ!左はインドネシアからの留学生A氏,花の向こうは同じく九大の院生のS君.右はUAEから来た深成岩が専門の岩石屋さんでさすがにアルコールは飲まなかった.

このあと次の目的地は首都Pretoriaの北40kmにあるTswaing Crater. これも現存する地表クレータの痕跡としてはUSAのバリンジャー孔と並んで超レア級ものだそうです.この巡検とにかく移動といっても,サイト間は結構距離 があり,この午後もバスで半端でない距離(150km弱)を2時間足らずで走破.いくら高速道路が整備されてるといっても,日本では考えられない長距離巡 検となります.その間にリーダーGavin氏は我々を飽きさせないよう,地質の説明や南アフリカの事をおいおい説明してくれるのですが,これが結構南アフ リカなまり(オーストラリアなまりに似る)が強く,聞き取りに一苦労(というか半分は聞き取れてない!−>なまりがなくても聞き取れないという問題はさて おいて−−).そうこうするうちにクレーターが近づいてきました.本当に近くに近づくまでクレーターリムの高まりはそれと分りません.
 
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クレーター入り口の博物館です.もっと緻密なものを期待していたのですが,ちょっとがらんとしていて拍子抜け.でもofficeでガイドブックを買いました.ポールに立っているのが南アフリカ国旗です. 立体模型を前に立っているのは九大の院生O君
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リムサイトからのクレータ全景はこんな感じ.ちょっと逆光で撮りづらい.28mmの広角でも入りきりません.直径1100m,深さ200mで30-50mの隕石が22万年前に衝突したと考えられています. クレーター壁にたたずむ手前はモンゴルの地質学の教授(女性としてモンゴルで初めてPh.Dをとり,また初めて地質学の教授となったそうです).むこうはたしかスイスの人だったような?
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木星に衝突した彗星の発見者Eugene M.Shoemakerの石碑と筆者.彼はこのクレータを初めて隕石衝突と関係づけた人でもありました.感激. クレータの中はこんな感じ.真ん中の池(雨水ではなく地下水だそうです)が乾いて,回りにソーダの白い結晶ができています.
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析出する塩やソーダ類の結晶.なめてみると塩辛い.晩御飯にかけるため?に持って帰ったが誰にも相手にされなかった. クレータ壁のgraniteは風化して,しかも隕石衝突のとばっちりで構造が乱れています.それにしても古そうな石です(たしか17-19億年?).

この直後,バスに乗ってクレータの斜面を降りようとする我々の前に,突然,インパラ(鹿の一種)やシマウマ(Zebra)が飛び出してきました.初めて見る一足早い,サファリにちょっと感激しました.この日は首都プレトリアのホテルに泊まりました.


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