Day Tour 28th July 2002 /Around Johannesburg                                            20.Aug.2002

1週間の巡検が始まる前の日曜日,巡検の主催者のGavin氏の呼びかけで,1日ツアーが企画された.Johannesburgのホテルを早朝出 て,バスで近郊の有名な地質サイトを1日で一巡りする駆け足ツアーです.私はメールの案内を受けただけで本当に巡検があるのか心配でしたが,ホテルのロ ビーで早朝集合時間の1時間も前から待っていると続々と参加メンバーが集まり始め,やっと巡検が現実のものだと実感しました.(なお,下記の説明は当日の メモがほとんどなく,記憶に頼っているのでやや不正確です.また初日ということもあり,英語の説明の聞き取りがうまく行ってません.えっ最後までそうだろ うって?いやあのその−−−)

7月28日朝
 まずヨハネスバーグ北西のSterkfontein Caveを 訪ねました.ここはアウストラロピテクスの命名者Raymond Dartの後を継ぐ,Robert Broomによって1947年アウストラロピテクス・アフリカーンスの完全な頭骨が発見され,Mrs.Plesと命名された有名な260万年前の人類祖先 の化石産地で,世界遺産登録された場所です.20億年前形成という古い石灰岩(というかドロマイトが主体)がほんの最近の地質時代に雨水で侵食され巨大な 鍾乳洞を形成したところです.それでは中に入ってみましょう.
 
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アウストラロピテクス・アフリカーンスのふるさとSterkfontein Caveの入り口は何の変哲もない,道路際にあった.一同階段を降ります.Robert BroomのいたWitwatersrand University の文字が看板に見られます. 階 段を降りたSterkfontein Caveの入り口でガイドの説明を受ける.この後,緑の扉を開けて洞口から中に入る.茶色の看板の裏が洞口.看板の下の部分にはアフリカーンス(オランダ 系移民が主に用いていた旧公用語で南アではまだよく用いられている.地名はほとんどこれ.現在でも新聞は両方売っている)による注意.
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右手奥の鉄格子の中が有名な頭骨Mrs.Plesが発見されたところかどうかは,左手奥のガイド氏が色々説明していたのだが,聞き漏らしてしまった.このガイドさんも結構なまっていて聞き取りにくかった. 日本でもよくある鍾乳洞と同じ構造.しかし地下水が少ないのか,洞内にあまり水を見ない.洞内は狭くなったり,急に広い場所に出たりと変かに富んでいる.日本の秋芳洞などの観光洞よりはるかに規模が大きい気がした.ただ岩石の時代が1桁古い(約20億年)ことに注意.
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ド ロマイト(MgCO3)が主体の岩石の中にチャート(SiO2)の薄層が挟まれる.チャートは雨水に溶けないので写真のように板状に突き出している.地層 が全体として右に傾斜しているのもよくわかる.なお,これらの地層の形成自体は20億年以上前の大陸地殻のまわり海での堆積で大変古いものです.大量の CO2が石灰岩(ドロマイト)形成に消費されて大気中のCO2濃度も変化したといわれる. 石灰質の岩石が風化した残留土(テラロッサ)の中に,白い動物の骨らしいものが点在する.画面中央のコインが目印.化石人骨もおそらくこういう中に入っていた.テラロッサは還元環境で骨が腐りにくく,世界の化石人骨の多くはここと同じように石灰岩洞窟から発見されている.
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洞内は素晴らしく広い.鍾乳石もきれいで,1か所だけ水の溜まった地底湖がある.適度に照明がなされているが,天井が高く広大な空間もあり,見渡すのに首がいたくなる.地底湖ではガイドが昔の探検の物語りや伝説?をしゃべっていたが私にはよく聞き取れなかった. 発見したMrs.Plesの頭骨を抱く発見者のBroom博士像が見学コース出口の洞口に立っている.オルドバイ渓谷(ケニア)の化石人骨は有名だが,ここのサイトも世界遺産登録された一級のサイトだとあとからわかった.
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隣接する博物館(といっても小さい)の展示.ここで発掘された化石のレプリカが置いてあります.本物は首都pretoriaのTransvaar博物館にあるそうです. 化石人骨の系統図?あごの骨も種類が多い.Flat Faced Ape Manというタイトルの説明.写真では立派な展示に見えますが,世界遺産の場所にしてはちょっと寂しい展示室でした.

洞窟をあとにして,次はWitwatersrandの古い歴史的な金鉱山Kromdraai Gold Mine(1881年創業)を訪れました.
最近探鉱が進み,また少し掘り始めたそうです.Johannesburg近郊にはこのような古い鉱山跡がやまほどあります.中には古い坑道がテーマパークになっているのもあるそうです.
 
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平 板な地形で横に少しずつ道を深くしてやがて坑口にさしかかります.なだらかな傾斜の地質だけにこんな方法がとれるみたいです.鉱脈は堆積岩中の Quarziteの礫岩層に濃集しています.主な鉱脈にはReefという英語をあてています.約29億年前にこのあたりは大陸性の堆積物が集積する広い合 同扇状地であったようです.木の板の上を歩いて入坑します. 坑内の切羽の近く.ビデオを構えるのは九州大学大学院に籍を置くインドネシアからの留学生の方です.それにしても木材で坑道を支えているのは危なっかしいと思えるのですが,地震や地殻変動のほとんどない南アフリカですからこれでいいのでしょうか.
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灰 色の脈が何となく鉱脈のように見えるのですが,さほど英語が堪能でない私には説明が早すぎてここでも真相を聞き逃しました.あとで同時に撮ったビデオを チェックして調べます.層理面にそってずれているという説明があったような?あと掘るための道具とかの説明がありました. 探 鉱の責任者から,古い坑道の写真の説明を受ける.かつては裸同然の姿で斜坑に水平に渡された木の横棒にすわり,ろうそくの照明下でのみを片手に石を掘って いたのです.それからヘルメットをかぶるようになり,電気の照明を付けるようになりと進歩していきます.斜坑にするのはちょうど含金礫岩層(脈)の傾斜に 沿って掘るためです.
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帰り際に良いものを見せてあげると言われ,恐ろしいものを見せられました.坑口近くで捕まえたという毒蛇の冷凍仕上げです.この他,南アフリカは場所により,ダニなどが多いフィールドもあるそうですが,我々は今回そんな場所には行かなかった. 番 外編でこれは,南アフリカの紙幣で,Randといいます.1Rand=約1ドルで120円くらいの計算になります.最高額の紙幣は図の200RANDです から,約2万4千円くらいの高額紙幣です.紙幣に南アで見られる動物のBig5が描かれています.コインはまた別の場所で.

さて駆け足の旅で昼頃にやっとたどりついのは,これも有名な滝の見える観光地Witwatersrand National Botanical Gardensで す.南アフリカでもこのあたりは川が極端に少なく,ヨハネスバーグ近郊ではいわゆる渓谷を車窓からあまり見ません.渓谷美が見れる数少ないポイントの1つ であるここはきれいな滝があり,人々が訪れる観光地として整備してあります.芝生の公園内には,南アフリカの代表的な岩石を時代順に岩石園のように一同に 展示してあります.最奥にある滝は右側に高巻く道がついていて簡単に滝の上にでることができ,Geological Walking Trailと名付けられています.
 Witwatersrand Supergroupと命名される一連の砕屑岩層(30億年前後)はこのあたりのKaapvaar Craton(30億年以前)の最古のgreenstoneの基盤(特異なkomatiiteなどで構成される.これは地球最初の海洋地殻と考えられてい る)を直接被う最初の分厚い地層です.その最下部がこの滝に見られるOrange Grove Quarziteだとガイドブックにありました.このQuarziteは硬く侵食に強いため写真のようなRidgeを作るようです.それでは近づいてみま しょう.
 

公園の全景,正面がリッジにかかる滝.右手芝生奥に岩石園が遠望できる.食堂はこの背後の芝生の中にあります.見晴らしのいい庭園での食事となりました. ごらんの様に園内には観光用の車が走り,ちょっとしたテーマパーク並みに整備してあるところです.
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以下,岩石園の岩石を見ていきます.まずこれが基盤の片麻岩.以後大体時代順に並んでいます. これが超塩基性のgreen stone lava?最古の海洋地殻の一部?
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これもそう?あれコマチアイトだったけ? これはこのあたりの砕屑岩の中心をなすクオーツアイトだよね.砂岩ですが,非常に石英分の多いものです.風化して独特の赤みを帯びています.代表的な南アフリカの地層の外観を醸し出します.
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Sterkfontein Caveでみたのと同じ20億年前のドロマイトとチャートのようです.溶食されず突き出しているチャートが印象的. これ有名なKarooのドレライトだったかな?このとき早口の説明でどんどん先に行ってしまうので,ちょっとわからなかった.あとまだあったけどもう省略.Karooのドレライト(粗粒玄武岩)は確かマグマの分化作用の好例とどこかで習ったような記憶が−−.
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ほら滝に近づいてきました.思わず箕面の滝を思い出しましたが,だいぶ雰囲気は違うか−−.この滝の下で,カナダの女性地質学者にNikonのデジカメを褒められてちょっと照れる. 侵食に強いQuarziteのリッジ.侵食といっても,この時期は雨が本当に少なく,いつ侵食されているのだろうとちょっと思ってしまう.
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滝の上の展望台です.白いQuarzite層がケスタのようにせり出しているのがわかります.Witwatersrand Supergroupは最初の原始地殻(Kaap Vaal Craton)上に堆積した最初の陸成ないし浅海成の地層と考えられています.時代は30-29億年位と推定されます. 美しいrythmicalなQuarziteの成層.とても30億年前とは思えない素晴らしさ.この赤色こそアフリカの台地の赤!
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パネルにはQuarziteのwaving ripple markとあります.確か,層面が滑っているduplex structureという説明も聞いたような−−−. 滝の上流方向は拍子抜けするなだらかな風景.もはや渓谷ではなく単なる平原?向こうには小さな街が見えます.
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先ほどのQuarziteの上部に重なる黒いShaleはmagnetiteを多く含むため重く磁気を帯びている.ここのサンプルも鉄製のナイフを引きつけるくらい磁気を帯びていた. 展望台の横に地質を説明したパネルがありました.地質関係の説明はこのように大変充実しています.さすがGeological Trail!

実はこのGardenのレストラン(といってもアウトドアのテーブル)の昼食で初めて鹿の一種Impalaの肉を食べました.臭いと聞いていたので すがとんでもない.柔らかく美味しい肉でした.Impalaはライオンの好物だというのが改めてよくわかりました.でも後にサファリで本物を見ることにな るImpalaの目は狩られる動物としての悲しみをたたえ,あえかな美しさをただよわせるのです−−−.そういえば食事のあと,みんながドリンク代を払わ ずに歩き出したので,あわてて店の人が出てきましたが,リーダーのGavin氏が対応していました.巡検費用から払ってくれたのかな?

 さてお腹もくちた私たちはBusに乗って静かにシェスタに陥ちるのですが,その間にBusはどんどんヨハネスバーグに向けて帰ってきます.途中, 何ヶ所か,金鉱山跡をバスの中から説明してくれました.今は家が立って居る場所が抗口だったとか,地層が走向方向にずれて,そのはずみで鉱脈もずれて次の 谷に出てくるとかそんな話でした.
 夕方,ヨハネスバーグのほとんど市内に入ったあたりに最後のポイントGeorge Harrison Parkがポツンと忘れ去られたようにありました.あれどこかで聞いた名前だなあ?いえあの有名なバンドのギタリストとは違います.彼は1886年Main Reef Conglomeratesと呼ばれる含金礫岩層をここで最初に見つけます.そしてそれはその後のヨハネスバーグの空前のGold Rushの幕を切って落とすことになります.というかヨヘネスバーグ自体がそうして出来た街です.
 
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George Harrison Parkの入り口.大きな道路沿いですが,何か忘れられたように寂しい場所です.門の中は奈良公園のような草地の敷地が広がり,草は焼いてありました. 入り口を入ったすぐ左側にかつての鉱石の粉砕機がありました.スティームエンジンでベルト駆動したそうです.むかし水車小屋にあった米つき機と同じ仕組みだと思ってください.
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さ て敷地の一番奥に柵があり,その向こうにかつての坑口が3つあいていました.坑道は含金礫層にそって向う側に40度くらいの急な角度で傾斜していました. かつてのGoldRushをしのばせる場所なのですが,こんなところから金を掘っていたのかと信じられないような寂れた場所の片隅にあります. その坑口の1つのクローズアップ.坑口の左に黒く水平に見える層がMain Reefの含金礫層.坑口の上部に見える黒い層がMain Reef Leaderと呼ばれる少し薄い礫層です.その上部写真の上端右にはQuarziteの表面にクロスラミナが見れるのですが,写真ではどうでしょうか?この地層は扇状地もしくは波打ち際に近い浅海性の堆積物だと言われています.
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横の崖で地層の傾斜を見てみると結構あることがわかります.この写真のすぐ下に野犬の無残な死体がありました. 先ほどの入り口脇の粉砕機です.貴重な遺産なのになぜか焼け焦げています.誰かが焚き火して燃え移ったのでしょうか?ヨハネスバーグの治安の悪さがふと頭に浮かび,夕陽の中で何か無常を感じてしまいました.

最初の予定ではヨハネスバーグ市内の名所を見学しながら帰るはずでしたが,予定時間が押してしまい,あと,ホテルまでの道中,夕暮れ迫るヨハネス バーグの市内の様子は行程をバイパスして急ぐバスの車窓からみるだけとなりました.いくつかの鉱山のダンプ(屑石の山),そして近代的なビル街のはずれに スラムのように密集する貧民地区の粗末なトタン作りの四角い家々とゴミだらけの環境がこの国の現状を改めて見せつけました.道中の様々な思いを胸に暮れな ずむ頃,サントン地区にある豪華な4つ星のホテルに帰りつきました.1人で参加した海外巡検の最初の1日はこうして無事に終了しました.


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