Columbia Ice Fieldへの巡検(15 Aug.2003) 暫定版 2003.09/01

 学会のPoster発表も盛況で無事終了し,あとは巡検に参加してできるだけ写真とビデオをとること.そしてできるだけ現地で説明を聞き取ることが私の自分に課した仕事となりました.カナダの雰囲気にも慣れてきて巡検に参加するときも少し余裕が出てきました.

最初にCalgary近郊の氷河痕跡を訪ねます.まずドラムリンやエスカーのサイト.ここはエスカーの横切断面が出ている場所です.氷河の底にある流水路のたまった堆積物が直線的な丘になって残っているところです. しかしこの日はあいにく朝からこんな風に遠くの山が煙っています.例のBC(British Columbia州)の大きな山火事のおかげでBow河沿いにその煙が立ちこめているのです.もやの濃い場所では煙の匂いも強かったのです.
韓国のKim氏に今朝の新聞を見せてもらいました.図でKooteneyとCrowsnestPassの火事がとりわけ今日のコースには影響しています.ちょっと先が思いやられます.
次にハイウエイそばの谷の両岸に見事なTillが露出しているのを見に行きました.最後の氷河期に関連する堆積物です.
Tillとは別に最上部にCrayが薄く重なっている.最終氷河の氷河の伸長と後退によるものとの説明.
さらに別の場所でもTillを見る.河を渡って崩れやすい斜面を登りました.
ここでも上部にHoodooのような風景.Tillというともっと角礫を想像したのですが,この日のTillはどれも礫が結構丸かった.
そのTillに行く前の草地に動物の糞がおびただしく落ちてます.地元の方がDeerだと言ってました.明らかにこれより小さいものもあり,りすかうさぎのものだと思われるのもありました.りすはよく目撃しました.何種類かいるのですがどれもかわいいものです.
これは動物の糞ではなく松ぼっくり?です.なかなか小さくきれいなものです.
さらにこんな石炭もいたるところに落ちてました.このあたりは最近まで稼業した炭田がいくつかあり,それらの石炭はカナダでは使われず(USからの安いものがいくらでも入るので),バンクーバーから日本に輸出されていたと言ってました.gradeはmidium-highからhighと言っていました.時代はMissippian(石炭紀前期)だそうです.
途中トイレ休憩に立ち寄ったレストハウス
電話やお菓子の販売機.どれも甘い物が多いのがちょっと困る.巡検でもみんなこんな甘いのをばくぱく食べています.
これは長距離バスGreyhoundのチケットか荷物の札にでもなるのか?OntarioやQuebecの文字も.
バンフの側に聳える有名なMt.Rundelもこんな風に煙っています.なだらかな尾根の方が層理面を示しています.
さて次の立ち寄り地は美しい堰止め湖,モレーンレイクです.目の前の丘が堰止めた犯人ですが,これはモレーン(氷河が周囲の岩を削ってできた堆積物の丘)ではなく山崩れによる堆積物だと説明されてます.
近くによるとこんな風な荒々しい角礫岩の山です.思わずこれがモレーンだと信じていたのですが,説明書ではどうも違うようです.
この丘には様々な面白い堆積構造が岩片にみられました.これは説明板もありリップルマークが見られます.
よくみるとこれもリップルマークですが,大変大きな規模ですね.
これはストロマトライトかと思ったのですが,どうもロードキャストのようだと誰かが説明してました. 左の拡大図です.
これはクロスラミナ.
別の拡大です.
これはサンドイッチ構造と看板にあります.
これが拡大.
さて湖はすばらしくきれいな色です.しかし,前述した煙がこんなところまで覆っていて視界が煙っているのが残念.
丘から湖の下流側にはみごとなモレーンの丘が続きます.木に覆われている丘がどうやらモレーンそのもののようでした.
この丘もそうです.
さて来た道を帰ります.角礫の表面にさまざまな模様がみれそれを探しながらバスに戻りました.
湖の右側に絵にかいたようなきれいなレストラン兼ロッジがありました.
そこから再びバスに乗り,ほどなく今度はPeyto GlacierとLakeです.
U字谷の底にきれいな湖が見えます.
正面から扇状地がせり出しています.
左側の奥に現在は後退した氷河が見えます.
その後こういった壁が続くハイウエイを北上
またここでは広い氾濫原が谷を埋めています.
続いて夕刻近くに今日の目的地Athabasca氷河の先端に着きました.でもまだ太陽高度は結構高いです.
氷河の先端のモレーンの丘を登って行きます.表示は1970年の氷河先端の位置です.この30年間に随分,氷河が後退しています.
まだ結構死亡事故も起きていて,注意の看板が立っています.氷河で冷やされた空気が吹き降りてくる冷たい風が強いところです.
氷河の上をクレバスに気をつけながら上ります. 氷河の側面にも侵食が進むモレーンがあります.
dscn1440.jpg
氷河の高い方から氷河先端の方を望む.幾重にもモレーンが重なっている. 雪が圧力で固められて透明な氷になっています.
氷河の先端部は解けた水がトンネル状に流れだしています.氷河の底は青い氷ですね. 氷河に削られた跡,「擦痕」が岩盤にくっきりと出ています.左側に現在の氷河あります.
これもそうです.氷河の流れの方向は左から右です.
この図では氷河は右から左に流れていった跡です.
その拡大です. このような凹凸のある岩盤状にも傷がついています.水平方向の傷が「擦痕」です.写真の方はブラジルの大学の先生です.
この石には2方向の傷がついています.氷河の動きを想像してみてください.
これは1982年の氷河先端の位置.中央の人物のすぐ右前方の道路際に1970年の表示が遠く見えます.10年あまりでこれだけ後退したことになります.これは最近の地球温暖化の反映だと言われています.さらに後方駐車場のあたりには1959年の看板もありました.
氷河後退を示す看板.
帰りのバス道からの見事なU字谷です.
これもそうです.上の方とU字谷が2段になっていますね. 氷河に削られた見事な造形がそこかしこに現れます.
dscn1519.jpg
これもそうです.最上部の白い部分は石灰岩で侵食に強いためこんな風に屹立して残るのでしょう.さらにたくさんの衝上断層で切られ,上部ほど古い岩石が出るのが特徴です.
この日の夕食はこのドライブインで.もう夕刻7時半過ぎなのですが高緯度のカナダの夏の夕日はまだ高い高度です.
食事のメニューは例によって,ハンバーガー,サンドイッチ,ケーキ,サラダなどです.いいかげん「うどん」とか「どんぶりもの」とか欲しいのですが,−−.
この河の両岸にもTillの丘が続いています.本当に氷河に始まり氷河に終わった1日でした.大学寮に帰り着いたのは10時半頃だったか?本当に長い日でした.



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