Alberta Dinosaurs Provincial Parkへの巡検(16 Aug.2003) 暫定版 2003.08/30

 今回学会に付帯する巡検はすべてCalgaryから日帰りで都合7日ありました.これを適当に選んであらかじめ申し込んでおくのですが.ここで私はミスをおかしました.あまり恐竜に魅力を感じなかった私はこのProvincial Parkの巡検ではなく別の巡検を申し込んだものと思い込んで,この日の朝はゆっくりと構えていたのですが,先に出発したN氏があわてて帰ってきて,私の名がリストにあるのにまだ来ないからみんなバスで待っていると知らせてくれました.あわてて用意をして出かけましたが,バスの出発を遅らせてしまいました.日頃偉そうに言ってこんなミスをしていてはだめなのですが,−−.それでこの日はバスの中でおとなしくしていました.でも結果的にバージェスは別格として,この日の巡検は”瓢箪から駒”で大変印象的で有意義な巡検となりました.まあバージェスについで2位にランクさせてもいいかな?白亜紀の絶滅寸前の恐竜化石サイトとしては文句なく世界最大の場所です.白亜紀恐竜のふるさとともいうべきこのユネスコ遺産サイトへの巡検の紹介です.

参考サイト:http://www.cd.gov.ab.ca/enjoying_alberta/parks/featured/dinosaur

日本語では恐竜州立公園と訳すのでしょうか?カルガリーから250kmほど東にハイウエイを走って横道に入るとすぐにバッドランドの入り口です.ここにも小さいながら博物館のような展示と研究室を持つ建物が入り口に建っています.
研究室でまず説明を聞きます.Dinosaursの発音はディノサウルスではなくダイナソーに聞こえます.
こんな風に化石をとりだす様々な装置がところ狭しと備えてあります.
これは恐竜のBrainSkullと呼んでいました.頭の部分ですね.石膏で周りを固めてあります.
こんな風に組織がまだ新鮮な感じがします.
入り口の看板です.平原の中に川が谷を切り込んだいわゆる幼年期地形の谷底に降りて行きます.
ガイドのDaveのTALLY HO !の掛け声で,みんなTrailに出発です.
まずテラスのようなところで地層の上下面の模様の説明.というか生徒に問いかけるように我々に問いかけが行われます.inquiry based learningという奴でしょうか?
こんな風な地層の断面で,硬い部分はiron stoneと言っていたと思うのですが.その下にカキの化石床が見えます.これは最上部の海成層なのか?
裏側にはこんな荷重痕が見られました.なんでもまだ液体状の泥が群れの恐竜の移動する地響きで揺すられてこんな模様ができると言っていたような,−−.本当かなあ?
さて最初の恐竜のQuarryで昼食前にDaveのlecture.ハンディGPSを手にこれがいかにcoolかを力説しています.それまでは写真とスケッチと地図を片手に恐竜の発見場所を記載していたのだが,同じような景色ばかりで迷ってばかりだったとか.新しいgrid座標がどうのこうのという話もしていました.
早速我々は足元に骨片をみつけました.胸がわくわくします.
恐竜を発掘したサイトにはこんな風な認識票が建っています.この記念すべきサイトでランチをとりました.でもいつものサンドイッチとジュース,ケーキでいいかげん飽きてきます.またまた味の薄いボイルドビーフ?だったので塩辛いポテチと一緒に食べました.
さてお腹もくちてさらにTrailに出発です.小さなHoodoo(風化して塔やマッシュルームのようになった部分.そういえばトルコにこれで有名なカッパドキアというところがありますね.行ったことはないけど)が見えます.
見事なクロスラミナが見えています.河床堆積物やストーム堆積物だと文献にあります.700km幅とアマゾンよりも広い河床を想像しているようです.
サボテンがいかにも西部劇に出てきそうな荒野を引き立てます.そういえば,毒蛇も少なからずいると文献にありました.この学会の巡検はいずれも朝,集まった最初にWeaverと呼ばれる,一種の確約書にサインさせられます.つまり事故が起こっても自分の責任で主催者に一切文句をいいませんという確約書です.カナダの契約社会ぶりを思い知らされました.
さて,ちょっとした露頭です.ここでガイド氏は「現在は過去を解く鍵である」という有名な語句をこの露頭を例に説明していきます.なかなか見事な解説でした.
下が白亜紀の砂岩.上が氷河期の崖錐堆積物です.上の堆積物は河川の堆積(Gravel)ですが,これがこの切り割りがみられるこの河川と同じ場所をまさに示す堆積物だ云々という話でした.
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この水たまりで画面の左で人一倍お腹の出た大学の先生が何か見つけました.
実はこのようなこうもりの死体でした.これをめぐってこの先生はまたひとくさり「現在は過去を解く鍵である」と語っていました.でもこの先生,結構,尊大な人で私が折角おいてあげた図のスケールを邪魔だといって取り除き,自分の一眼レフのキャップを置き直すというオジサンぶり.私の知人のN氏は日本の有名なある大御所の先生に似ていると言ってましたが,私はとても恐れ多くてその方の名はイニシャルでも書けません.
画面中央にクモがいました.毒虫のたぐいはさそりを含め結構いるようです.また鳴きバッタがうるさいのですが,それ以外の昆虫は意外と少なかったような.くだんの大先生,ここでも一眼レフを振りかざしていました.
さて,少し谷底のほうに降りてみましょう.この谷の侵食はわずか1万数千年前,最後の氷期の終わりとともに始まったそうです.氷河湖の決壊による大洪水が溝を刻み出したと文献にありました.現在でもかなりの速度で侵食により壁は後退しているそうです.そのため現在でも毎年新しい露頭で恐竜が発見されると言っていました.
と思ったらまた少し上に登って景色のいい露頭に出ます.ガイド氏はこの露頭の場所を説明しています.何でも砂岩のうち,非常に幅広い(700km)河床の堆積物だという説明だったような,−−.従って破片が多く完全な固体はここにはほとんどないという話でした.
こんな風に面白い形に削られています.参加者はこのあたりで思い思いに化石探しを始めました.足元にいくらでも恐竜の骨の破片が散らばっているのでみんな興奮しています.
こんな風に至る所に雨に洗われた骨の破片が落ちています.このうちの一つの破片でも,もし日本で出ればそれだけで新聞ねたの大ニュースになるはずですが.
こんな風に乾裂の中に大きな骨も埋もれています.だんだんと骨化石に目が慣れてしまい感動も失せてきてしまいそうです.
ガイド氏は参加者が集めて化石を次々と凄いスピードで鑑定していきます.これはクロコダイルのどこそこの骨.これは何とかいう恐竜の骨,これは歯といった具合.恐竜の表皮という珍しいものを見つけた人もいます.ただし,ここも保護区でもちろん持って帰ることはできません.カナダは国全体が化石の持ち出し禁止となっているようです.
さて,次にもっと凄いものを見せようということで連れて来られた場所には先ほどの場所の感動がまた失せてしまうほどの凄い恐竜の大腿骨が砂岩の表面に出ていました.ガイド氏は早速ここでこの骨の長さを持参のピッケルで計ります.次に地元の女性を立たせ彼女の大腿骨の長さと比べて,この恐竜がいかに大きいかを,肩車で人を立たせて恐竜の腰の高さを表現しました.
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つぎにこの腰に参加者を手伝わせて胴体と尾をつけて行きます.全体の大きさはビデオにとったので写真はありませんが相当おおきなものです.メスの恐竜だと言ってました.
次に場所を移して,Bone Bedの話です.ガイド氏の足元の水平層に添って化石が転々と見つかるとの話です.全体の面積を考えるとまだ一杯あるはずだという話や,恐竜が死んで地表に骨がさらされたあと,洪水によって埋もれたという話.そういう場所を今.地球上で探すとしたらバングラデッシュの海岸付近がそれにあたるという話など.あともう1か所でとうとうと講義をしてくれましたがそれはビデオに納めて写真はありません.
流石にBoneBedでこんなのや
こんなのなどそこら中にごろごろしています.
ただ,私はこんな堆積構造や
こんなガーネットを含んだ片麻岩にも興味がありました.ちなみにこのスケール,今回の学会でいただいたものです.前の学会のシドニーでは2枚しかゲットできなかったので,今回はブースに何度も失礼して10枚近く手に入れました.
先ほどの場所を最後に恐竜探しは終わり,また出発地点に戻ります.バスで先に帰る連中と分かれて,我々は徒歩で帰りました.
こんな景色や
こんな風に石を入れて整備してある場所など,興味は尽きません.ここには様々な深成岩と片麻岩がありました.次の道の分岐点で遅れがちな我々日本人2+韓国人1のグループをガイド氏が待ってくれてました.
ここには画面中央に白い層が見えたので,ガイド氏に火山灰か?と尋ねると,今日の一番良い質問だと褒めてくれました.なんでもQuartzの多い層で自分も最初Ashだと思ったが,調べるとそうではなかった.と嬉しそうに話してくれました.あと地層のことを2,3聞いたあと,日本でいうとこのあたりの地層の柔らかさや風化の仕方はとても白亜紀に見えない.せいぜい第四紀にしか見えないという話をすると,たいそう納得していました.また冬は零下40度まで下がることがある.その時はカナディアンロッキーでスキーをしているのだと笑ってました.山の方が零下20度ほどで過ごし易いのだとか.ちょっとスケールが違うなあ.
小,中学生の見学用のスクールバス?のダッシュボードにはかわいい恐竜のマスコットがいます.この日も何組かの小学生?の団体がこの車で見学していました.
韓国釜山の高校の先生Kim氏と.彼はこのあと米国に飛んで1年間のFoster期間を過ごすとか.理科教育のDocterを持っていると言ってました.この巡検,English Nativeでない国からの参加者は意外と少なく,彼のような存在は貴重です.だってゆっくりと英語をしゃべってくれるから,何を言っているかよくわかるからです.後半の巡検ではよく彼とバスの中で会話しました.カナダ人も悪い人達ではないのですが,しゃべるのが速すぎて聞き取りに何度も難渋してしまいました.
地元カナダの中学校の理科の先生で学会運営のスタッフの重鎮Jaqcy女史と.断層実験をいたく気に入ってくれて,自分の書く教科書に必ず採用するからと言われ,持っていって残った実験セットを全部寄付しました.彼女ほどの人でもここのParkに初めて来たと言ってました.地元の人でもPoyalTyrrellの博物館の方にはしょっちゅう行っていてもここまで来るのは稀な様子です.
バッドランドを望む高台で記念写真にいそしむ参加者.手間の赤い服の人はフランスの博物館の学芸員でいつもこんなジャニスジョプリンみたいなゆったりした服を着ていました.さすがにパリジェンヌだけあって服のセンスは抜群です.ただ大学寮の前の芝生でカナダの禁煙は始末に悪いという感じでしょっちゅうたばこを吹かせていたのが印象的です.
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バッドランドから出て少し行ったところに深いWellを掘っているというサイトに遭遇しました.何でもマントルまで掘る計画とか.そういえば同様のボーリングサイトが中国山東省にあったのをどこかの文献で見ました.
珍しく規則的に植えられた植生です.畑は丸く円形に水やりのパイプが回るタイプのものが多いようです.飛行機からみると丸く見える例のやつです.
帰りが遅くなり腹がへるというので,こんなPubに立ち寄ります. 店の中はこんな感じで西部劇にでも出てきそうなたたずまい.肉やチキンを注文して,自分で焼いて食べるシステム.私はテリヤキチキンを注文して10ドルくらいだったかな?Pubの名の通り,1人で飲みに来る近所の人も居て,日本で言えばさしずめ田舎の一杯飲み屋という感じか.Jacky女史も自分で焼くのは長くカナダに住んでいるけど初めて見たと言ってました.ふーんそんなものかな?
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ほーらみんな自分の肉の焼け具合を気にして何度も裏返しています.画面中央の今日のガイド氏は16オンスもある分厚い肉を焼いていました.あれだけのエネルギーはやはり食にあるとこの時感じ入りました.彼はこの後,ガソリンスタンドに立ち寄って自分の車に乗り換え帰りました.そういえば車の運転とアルコールに関してはそれほどうるさくない印象でした.だいたい道を走る車の数は少ないし,おまけに道はまっすぐだしということでしょうか?
スープや野菜サラダとガーリックトーストもついてカナダでは標準の食事で10ドルあまり(約1000円)は他のレストランと比べて安いように思えます.ビーフを食べた知人の三重県の高校の先生はこんなに安くおいしい牛肉は初めて食べたととても喜んでいました.ただ,カナダは意外と外での食事が高い国です.学食でもほとんと5ドル前後で,この国で安く生活するにはスーパーで食材を買って自分で作るしかありません.

ということで,この日は意外と早く夜の8時半頃大学寮の前に帰りつきました.私の朝の失態で遅らせた時間での遅延はほとんどなく,ほっとしました.英語の聞き取りにもだいぶ慣れてきた気がするのですが,いかんせんVideoのテープが少なくなり,この日の録画は極めてすくなく,折角重要な話が多かったのにといささか残念でした(またVideoの聞き取りが済めば,このページの内容更新をする予定です).さて巡検は翌日のカナディアンハイウェイトランセクトが最後となりました.

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