富山立山山麓〜新潟県青海〜糸魚川地学巡検のページ  01.Sep.2004 新設 

大阪の高校の地学の先生たちと一緒に,8月の3日から5日にかけて,立山山麓の飛騨変成岩類,青海町のひすいと石炭紀石灰岩化石,糸魚川のひすいとフォッサマグナ断層露頭などを巡検してまわりました.その報告です.

8月3日 富山市〜常願寺川堤防〜立山博物館庭〜称名の滝展望所〜亀谷温泉〜宇奈月役場
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富山市から立山に向けて常願寺川の扇状地を川の堤防に沿ってさかのぼっていた途中,堤防に巨石が埋もれています.この写真の石碑ではなく足元の左下までの堤防を覆う白い表面が1個の巨大なれきです. 案内板によると,安政5年(1858年)の跡津川断層を震源とする地震により,崩壊した岩石が雪解けに伴う洪水で富山市の方に大量に運ばれ未曾有の被害を出したときのものという.
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次に立山博物館の広大な庭の片隅に飛騨片麻岩の磨いた石が展示してあります. 磨いた表面には案内の富山大学椚座先生が混合変成作用と呼ぶ,片麻岩と石灰岩が混合した複雑な変成作用をしめす証拠が残っています.
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立山へのドライブウエイを遡ると両岸絶壁のかなたにはるかに称名の滝が見えるポイントがあります.上部は立山の台地を構成する溶結凝灰岩です. 称名の滝を遠望.台地を構成する最上部は厚い溶結凝灰岩です.
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左岸の壁はカールのような地形が連続します.節理だという意見と氷食地形だという意見と両論あるとか. 立山ケーブルの乗り場横の河原です.この上流を立山カルデラ(火山ではなく侵食でできた)と呼び,全国2位の予算をつけて大砂防工事が続けられています.この河原のすぐ左側に立山カルデラ砂防博物館があります.
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砂防工事に使うトロッコの線路が観光化されて展示してあります.ちなみにこの線路,冬場は雪崩で破壊されるので,全部撤去し,また春に敷き直すそうです.巨大な予算を使う理由がよくわかります. 昼食後,亀谷温泉の裏の河原に下りてきました.ここは富山県で初めて恐 竜の足跡化石が発見されたところです.しかし肝心の露頭はすでに草に覆われていて見ることはできませんでした.地層は手取層群と呼ばれるジュラ紀のもの で,日本海が最初に開いたときの湖に堆積した砂岩,泥岩のなかから化石が多数見つかります.
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さてさらに川を下ってほとんど扇頂部に近い場所ですが,道沿いに玄武岩ないし安山岩組成の自破砕溶岩の露頭があります. 日本海が最初に割れて拡大したときに,水深500mくらいの深さで噴火した海底火山の溶岩だそうです.それくらいの深さを示す微化石と共存していることからそれが解るとか.ピジョン輝石という高温のマグマを示唆する鉱物が含まれるそうです.
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さて最後は宇奈月温泉の山道ぞいで十字石片岩という結晶片岩の露頭や転石を見学しました.中温中圧という条件でできる珍しい岩石だそうです. 宇奈月町役場の前の芝生の上に十字石片岩の庭石が転がしてあります.何の説明もないので見過ごしてしまいそうですが,きれいな十字の鉱物が表面に浮き出しています.古くからの産地は天然記念物だそうです.

8月4日 宮崎鉱泉〜親不知〜青海町立自然史博物館〜橋立ひすい峡〜明星セメント石灰岩石切場
宿舎の宮崎鉱泉のすぐ裏にある海岸.この転石のなかから運が良いとひすいが見つかるそうです.
朝かなり早朝から目を皿のようにして探したのですが,なかなか本物は見つからないようです.
午前の最初の露頭は名勝「親不知」の旧国道ぞいの壁です.親不知火山岩類と呼ばれる安山岩からなる絶壁です.それにしても昔はこんな狭い国道をトラックやバスがすれ違っていたとは驚き.実に4世代にわたって道の付け替えが行なわれたとか.
道からのぞむ親不知の断崖.江戸時代は道がなく,はるか下の浪打際を通ったそうです.通れないところは「青の洞門」のようにトンネルを掘ったとか.参勤交代で大名行列が通る際は,行列に波がかからぬように近在の村人を集め海側に座らせて波よけにしたそうです.
ガーネットの斑晶の目立つ安山岩のようです.
「親不知ピアパーク」という道の駅にある展示館に巨大なひすい原石の展示.何でも盗掘を恐れて現地の渓谷からわざわざ道を作って海岸べりのここまで運んだそうです.
100tあると言っていたような,−−.部分的に翠や紫の部分もあって美しい石です.
さて,新潟県の青海町立自然史博物館に到着.ここでも巨大なひすい原石の展示に驚かされます.岩石のまわりには盗難防止のセンサーが働いているそうです.
この博物館の展示館入り口に置いてあった「ラベンダーひすい」(紫色のもの).これは美しい.
この「ざくろ角閃石片岩」というのもきれいな石です.
博物館内の地質関係の展示説明を,この日の講師の学芸員茨木氏より聞きます.
光を通すとうっとりするほど美しいひすいです.
こちらはミャンマーから輸入されたひすいです.かなり見分けが難しいそうです.
この日午後にたずねる明星山のカルスト地形の展示です.ここの鍾乳洞は深い縦穴なのが特徴です.でもこの地域は立ち入りに許可が必要だそうです.
さて午後は,まず橋立ひすい峡に向かいます.青海町の経済をささえている「電化工業」の工場街を抜けます.石灰岩からセメントをはじめ様々な化学製品を作る工場です.
さてここが天然記念物橋立ひすい峡の入り口です.バスは入れずここから歩いて峡谷に下ります.
人が立っている横の白い岩がひすいの原石です.こんなのがまだごろごろあって,監視カメラで盗掘されないよう見張っています.
周りは蛇紋岩の崖でこれのどこかからひすいは転がってきたらしい.でもまだひすいは転石のみの発見ばかりで,ひすいの出た露頭は確認されていないとか.
電化工業の石灰岩採掘場とベルトコンベアのようです.このあたり至る所に採掘場があるようです.
さてこの後,28人乗りのバスはこんな狭い急坂とカーブを明星セメントの石灰岩採掘場まで我々を運んでくれました.運転手さんの素晴らしい技術の成せる技でしたが,正直かなり怖かった.
これは古い採掘場.バスは1000m近い標高まで我々を運んでくれました.手前の石灰岩の転石に石炭紀のサンゴや腕足貝などの化石が含まれています.
こちらははるかに青海の市街を望みます.その向こうは日本海です.
化石採集場所まで暑い中を歩きました.なぜか化石採集の写真は採集に必死になっていたのかありません.
この日泊まった糸魚川温泉.素晴らしい料理と温泉で良い宿です.
ホテル裏の姫川の河原の砂の波紋が夕陽にきれいだったので写真を撮ってみました.
そしてこれはこのあたりでみやげとしても売っている浸透した水分か何かが作った面白い模様の石です.何となくフラクタル模様に見えるのですが,−−.



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