2021年汐ノ宮火山岩露頭  火山岩が専門の佐藤隆春さんと.      2022-08-07

以前に行った露頭の写真を整理します.かなり記憶があいまいなので間違いがあればご指摘ください.
場所は近鉄長野線の汐ノ宮駅に近い,石川(大和川の支流)の河床.二上山などと同じ時期の新生代中新世(1600万年前)の噴出岩や貫入岩が西日本の各地に散在する.
そのうちの一箇所.化学成分(SiO2量)的には安山岩になるが,高いMgO量をもち,マグネシウムMgに富むかんらん石や輝石を斑晶に持つのが特色.HMA(High magnesian andesite)というそうだ.

化学分析などの文献は下記.
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/33958
のTableIIIが分析値.

佐藤隆春さんに案内と,この記事のミスを指摘していただきました.ありがとうございました.

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大和川の支流石川が河内長野市に入った場所.近鉄線汐ノ宮駅からすぐ側の橋から上流(南向き)を写す.左が汐ノ宮温泉の保養施設.川の中央にある岩が今回の露頭.私の自宅から自転車で40分弱の道のり. 右岸には温泉療養施設が建つ.この施設の横から河原に降りる階段があるが,普段は鍵がかかっている.自治会長にお願いして鍵を貸してもらった.下の写真が火成岩露頭のクローズアップ.
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この河原には,冷泉が湧く場所が幾つかある.写真の酸化した赤い水の部分.左側(石川右岸)にはかつて冷泉を利用した?保養施設が建つ河原.地元自治会が 管理する鍵を開けてもらって,階段から河原に降りた.水たまりの奥が火山岩露頭.瀬戸内火山岩類に属する新生代中新世(1600万年前とwikiにある) の噴出物.二上山や,小豆島,屋島などと同じ瀬戸内火山類に区分される.

逆に北側を向いたところ.火山岩露頭から南側(石川上流)を望む.この写真の右側の河原には大阪層群の若い地層が分布する.最初の写真は奥の橋の上から撮影.柱状節理の多角形は左手前上方を向く.大阪府下でこのような黒い(苦鉄質)の溶岩流が広く露出する場所は,二上山近郊を除くとほかにはあまり知らない.
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柱状節理がわかりやすいところ.手前方向に向いている.時代は1400万年で二上層群にあたる.二上層群相当の火山岩類は大阪府南部に転々と知られているが,いずれも里山となって露出が悪い.このように河原で露頭が見られる場所は限られていて,他にあまり知らない. 斜長石の斑晶が確認できる.成分的にはサヌカイトに近い安山岩とwikiには書かれたが.あとの方の薄片写真にはあきらかにかんらん石が含まれる.岩質は肉眼では無斑晶の安山岩(SiO2 56%)だという.しかし上記したように顕微鏡下ではかんらん石を含むのが特徴.ルーペでもかすかに見える場合がある.高Mgの瀬戸内火山岩類の特徴を持つ.
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溶岩流の下部の下の地層を巻き込んだ部分.礫として当時の地表にあったと思われる岩石を巻き込んだ構造.領家帯の花崗岩なども見られる. こちらは原川累層と思われる下部の地層(右側)と溶岩流(左側)の接触部だとS先生は説明する.右の原川累層には砂と礫が含まれている.二上層群と原川累層は下記文献を参照.https://www.kubota.co.jp/.../pr/urban/pdf/28/pdf/28_3_5.pdf
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原川累層にみられる礫の並び.溶岩流との関係が興味深い.堆積岩にはあまりラミナなどが見えないので,すべってきた土砂のようなものではないかという解釈. こ ちらは溶岩流の西側に大阪層群(200万年より若い)の基底礫岩がかぶさっているところ.緑色の生地をもつ礫岩が大阪層群のもの(基底礫)だという.つま りここには古い溶岩流(左側,新第三紀)にアバットする形で若い第4紀の大阪層群が重なる不整合が露出する.ハンマー位置が不整合の場所(右側に大阪層群 が重なる⇒川で侵食されている)
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凝灰岩質の部分の拡大. こ ちらは本流から溶岩露頭を挟んで東側にある泉源だという水たまり.汐ノ宮の語源となった,古くから知られる鉱泉の炭酸ガスが,色の変わった水のなかに湧き 出している.S先生はガスにはマントル起原のヘリウムを含むという.これにはびっくり.この鉱泉がこの場所を昔から有名にしているとか.金剛山地にはこの 他に「鳥地獄」とか結構鉱泉やそれにともなうガスが吹き出す場所が知られている.河内長野には確か炭酸水を売るメーカーもあったような.
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佐藤さんが立っているのが下位にある原川累層と呼ばれる部分.赤い場所があるのは,この一帯で冷泉が湧いているのでその一部かも知れない.
この河原に見られる多様な岩石.領家帯の花崗岩〜閃緑岩ないしはんれい岩,和泉層群の礫岩,砂岩,泥岩,泉南流紋岩とこの場所の安山岩.さらにはに上層群の別の安山岩などとても種類が多い.ハンマーの右にあるのは花崗斑岩めいた石なのだが,どこかの石材かも知れない.
多様な岩石,溶岩流,それを囲む様々な地質構造(不整合)などetc.
この場所は地質見学に優れた場所であることがわかった.
薄片のうちCP(クロスポーラー).斑晶はかんらん石,直方輝石のほか石英もある,オパサイトリムに覆われる角閃石もあると佐藤氏の鑑定.
薄片のOP(オープンポーラー).角閃石を囲む黒いオパサイトリムが見える.佐藤氏の鑑定.






 

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