2020年秋 和歌山県立自然博物館およびモササウルス発掘サイト見学      2020年9月28日

地団研和歌山支部主催の標記の見学会に,旧友のB先生の紹介で,参加させていただきました.標記の博物館は海南市の海沿いにあり,特に地質関係や水族館展 示が優れた博物館です.入場料も安く当日は日曜日でしたが,エントランス前には開館を待つ子供連れが行列をしていました.我々は主催者の和歌山大学此松昌 彦先生の挨拶のあと,小原正顕主任学芸員の案内でまず本館とは別の近所の敷地にある収蔵庫に向いました.廃ビルのように思える民間のビル?が外部にある収 蔵庫の一 つで,地質関係のサンプル類はすべてこの2Fに収納されているとか.普段みれないバックヤードを見学できるまたとない機会となりました.この博物館は20 年前に小原学芸員が赴任する前には地質の専門家がいなかったため,彼がすべての地質資料をそれから集めたそうです.さらに2006年に近所の鳥屋城山(午 後に見学)で後期白亜紀層から,偶然京都大学の学生がモササウルスの骨を発見,これがきっかけで2010年冬から2011年の春にかけて,重機を入れた発 掘が行われ,採集された母岩類は近所の中学校に保管.しかも最後の岩石を運んだ日が,2011年の東北の津波の日,そのあと博物館に戻って警報が出て,和 歌山県職員である学芸員の皆さんは,職場待機になったという偶然とはいえ貴重な話を伺いました.それから7年にわたる歳月を要してクリーニングが行われ, 数年前にそれが終了.ようやくモササウルス のほぼ完全な骨格の展示を今始めようとしているところだそうです.化石自体も現在解析中で,数年うちには論文になるだろうという見通しを聞きました.それ ではそのバックヤードの見学の詳細と午後の発掘現場の写真などを報告させていただきます.なお,発掘の経緯は下記博物館HPに詳しいのでご参考に.画像は一部拡大画像にリンク(青いふちどり)しています.小原正顕主任研究員,詳しく丁寧な説明と案内ありがとうございました.此松昌 彦先生にも大変お世話になりました.お礼申し上げます.
なお,博物館のHPは下記,
https://www.shizenhaku.wakayama-c.ed.jp/
博物館のモササウルス発掘プロジェクトのHP
https://www.shizenhaku.wakayama-c.ed.jp/mosa/spot.html

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和歌山県立自然博物館は和歌山市の南の海南市の海際にあります.次に来ると言われる「想定南海地震」の津波高予測10mがちょうど屋上の高さになるとか.
開館時刻前に,和歌山大学の本日見学会の主催者此松先生から挨拶をいただきました.
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博物館のすぐ隣のボートの係留地.池と思ったら海でした!
さて敷地の横切って,3つあるという収蔵庫の1つの建物に入れていただきました.
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建物の2Fが地質関係と生物関係の収蔵庫とか.
最初にモササウルスの層から見つかったアンモナイトを見せてもらいまし た.淡路島で確認されているものと同じ種のパキディスカスというタイプです.これから発見されたモササウルスの時代がカンパニアンからマストリヒシアン (いずれも時代名)にかけての時代だということがわかるそうです.縫合線がきれいに見えています.
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さて収納されていた箱から慎重に取り出されたのは,
モササウルス頭骨の実物.東京での国立博物館の展示用などに,厚板アクリル板に骨格が組み上げられています.拡大画像をリンクしました.
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素晴らしい本物のモササウルス頭骨を前にみなさん,撮影大会でした.
これが2006年に最初に地元出身の京都大学の大学院生によって,偶然発見された骨の一部の化石.左がレプリカで右が本物.
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これが顎の骨に残った鋭い歯.サメの歯(断面が半円)とは異なり,断面が円になるのが特徴とか.
こちらは反対側の歯.抜け替わるために,周囲の母岩中にも散らばっていたとか.
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周囲の母岩中に発見された歯.
そしてこれが身体の下にあった,前ビレのほぼ完全な骨格.指先まで保存されているのは世界的にも珍しいとか.自慢のコレクションです.左と右の箱をつないだ形でヒレの骨格になります.かなり大きなものですね.
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主任学芸員の小原さんが背骨の一部を見せてくれました.背骨が完全左右 対称にはなっていない点に注目.左側が地層では下側に埋もれていて,保存が良く,左側は地層の相対的に上側に埋もれていて,なぜか保存の程度がよくないそ うで,骨が溶けたのか細くなっています.この理由はまだ良くわからないそうです.
横からみるとこんな感じで,背骨の突起もきれいに保存されています.背骨は全体の8割程度つながって発見されているそうです.あとで本館の展示にその様子が示されています.
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こちらは肋骨です.これもきれいに保存されている.
頭骨は元の保存箱に慎重に戻されました.廻りは白いクッションで覆われ ます.東京の科博での展示用に送るための箱とかで,箱の表には「日本通運の社名が.このような1点しかない貴重な化石に限らず貴重品の移送は,やはり天下 の日本通運だけができる仕事だとか.まあその分,輸送料は目が飛び出るほど高いそうですが.
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さてやっと家族連れで賑わう本館に戻ってきました.これが今回の展示の目玉.モササウルスの発掘状態を示すレプリカ模型です.結構大きい.
つながった見事な背骨や肋骨などがきれいに見れます.頭骨は左下に折り たたまれたようにあります.これ発掘状態をそのまま示したものではなく,発掘の各段階の様子を組み合わせて,再構成しわかりやすいように展示しているとか の工夫がされています.発掘そのものはこのような記録を取ることすら難しい極めて困難な作業であったことが,下記の博物館の特設サイトに記載されていま す.特に小原さんの発掘の苦労話は読み応えがあります. https://www.shizenhaku.wakayama-c.ed.jp/mosa/excavations.html
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もちろん反対側の展示ケースには近くで採れたアンモナイトなどの標本類がやまほど.化石マニアにはたまらない場所です.
白亜紀の後期は,すでに異常巻のタイプのアンモナイトが多数見つかっています.これはそれらの展示.かつて淡路島で同種の化石を見つけた私としては心躍る展示です.
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さらに陸生恐竜の歯まで見つかっていたのは驚きです.これはモササウル スが発見された後期白亜紀の鳥屋城層より少し古い,海岸沿いに分布する前期白亜紀の湯浅層の中から見つかったとか.湯浅層は海成と考えられていますが,植 物化石が多数みつかるなどやや特異な地層でさらなる恐竜の発見も期待されます.ほかに岩石,鉱物のコレクションもありますが,多数が和歌山県で見つかった 標本が展示されているのがこの博物館の素晴らしいところです.
さてきれいな海のマリーナの様子がみれる休憩室で休んで,水族館の方も見てみました.
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生物系が好きな人はこの水槽だけでも面白いかも.
巨大水槽もあって水族館も楽しめます.
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さてお昼を車で小1時間の道の駅ですませたあと,
鳥屋城山の中に分け入りました.これは地元の人が作った公園だそうです.ここに車を止めて歩きました.
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途中地層を見学して議論したりして.
歩いて20分ほどで発掘現場に到着.渓流が狭まり小さな滝を作るあたりで,想像していたよりずっと狭い場所で,どう発掘したのかを小原さんから説明を受けます.
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今草が生えているあたりが,重機で母岩を割ってとりだした場所だそうです.
ちょっと左岸側の道によじ登って上から撮りました.同じ場所の発掘中の写真がさきほどの博物館のサイトにあります.比較してみてください.発掘からすでに10年近くが経過しています.
https://www.shizenhaku.wakayama-c.ed.jp/mosa/excavations.html
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さて元の広場に戻って,皆さんが何をしているかというと.
広場の隅に積まれた,発掘時の捨て石(母岩)を割って化石を探しました!
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さて旧友のB先生と私は,隣にあるちょっと気になるため池の底を見ることにしました.
池の周囲に露岩が出ています.鳥屋城層なので,化石があるか期待が高まります.
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砂泥互層の部分もあり,B先生はハンモッキータイプの構造が見られると言ってました.
残念ながら,化石の方は2枚貝の印象やサンドパイプがほとんどで帰ろう として池の底で妙な石を見つけました.B先生がこれは骨だ!とにわかに色めき立って,早速小原さんに見せたのですが,残念骨ではなく基盤の三波川の結晶片 岩の一部だというという結論.それでも1日さわやかな秋めいた気候のもと,清々しい見学ができました.世話をしていただいた此松先生,現地案内や化石の説 明をしていただいた小原さんありがとうございました.



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