2020年夏,愛媛東赤石山周辺〜別子巡検(今年2回め)      2020年8月24日

2020年08月 3月に引き続き,旧知の大阪教育大学地学研究会OBのMさん,Nさん,知人で退職地学教員のB博士と,四国愛媛を再訪しました.今回は 狭義のエクロジャイトを観るのと東赤石山登山が目的です.地学研究会OBは車1台で姫路から.私とB先生は大阪から車で駆けつけました.片道5時間のドラ イブでしたが,いつもどおり地学の話に花が咲き,眠気は感じませんでした.

なお,参考文献は以下のとおりです.東赤石山を中心とする地学巡検ガイドが
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/123/7/123_2017.0038/_article/-char/ja/
特に東赤石山登山はこの文献の巡検コースを8割方たどりました.

なお,元大阪府立今宮高校地学科の松本静雄先生には,自作の大量の薄片写真をまとめた,ご著書である「石の中に宇宙を観る ー偏光顕微鏡で観る岩石の世 界ー」を寄贈いただいたほか,東赤石山の地質巡検ポイントに関する有益なご教示をいただきました.今回の巡検にはこのアドバイスが大変参考になりました. 併せてお礼申しあげます.

ほかに関川の岩石については,
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/123/7/123_2017.0025/_pdf
新居浜の地質図解説は 
https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_13040_2013_D.pdf

それでは,3日間の
旅程に分けて紹介します.

1日め.三島川之内ICまで高速道,そこから降りて国道を少し西に進む,前回と同じく別子川沿いの道を一路東赤石山へ.一旦「別子山ふるさと館」に立ち寄 り,月曜でも開いていた展示館の方を観る.エクロジャイトは1種類,ほかに別子銅山の鉱石類の展示を観る.その後少し東に戻ってN谷.こちらは途中まで林 道があり,橋の向こう側に駐車スペースもあった.

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別子山ふるさと館の展示館の方.月曜でレストランは休みだった.
エクロジャイトもちゃんと展示してある.あとで出てくる石碑の片割れと思われる.
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あと鉱物類の展示など.しかし現地見学に急ぐので昼食も取らずに早々に切り上げる.
少し県道を戻ってN谷の入り口から林道を5分ほど登ったところの橋から,谷を観る.
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岩石はこんな感じ.さる巡検案内にはエクロジャイトが落ちていると書かれていたが.
やや大粒のざくろ石を含んだ結晶片岩以外に,あまり大した収穫もなく,次の場所を目指す.
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こちらは春にも訪れたH谷.しかし途中の道が工事中のため,ヘアピンのところで切り返しを何度か.何とか無事に通過して,前のように橋のたもとに止めて,歩いて山に入り沢に降りる.春には良質のかんらん岩(ダナイト)を採集した.
さてここでもエクロジャイトを探したが,角閃岩の黒いものがほとんどで,こちらもめぼしいものはなし.

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そして,こちらが今回,ぜひとも写真に納めたかった石碑.2001年の国際エクロジャイト会議を記念して建てられた記念碑.これから向かうS谷の中流で採られたものとか.
しかし,よく見ると緑のオンファス輝石が目立つのは中央部だけで,上半部は黒い角閃石に変わる後退変成作用を受けているように見える.
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石碑の横にも風化面にガーネットが並んでいます.
ガーネットはごらんのように突き出ているようです.
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さて明日昇る予定のS谷に偵察に来ました.
これは春にも一度登りかけた道ですが,春のときはいつまでも谷に向かわないので途中で断念してしまいました.今回は谷に向かう道までとりあえず来ました.
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さてそこからやがて何に近づくのですが,数多くの登山レポートにある頼りなさそうな橋が結構連続します.
これは斜面に掛けられた粗末な木橋.
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こちらは最近架けられたのか,しっかりしている.
谷は小さな滝が連続しています.しかし日没も迫り,この日は1200m地点を目前に退却です.変はんれい岩の露出する露頭は結局確かめられずでした.
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暮れなずむ時刻ですが,春にも訪れた鹿森ダムにも立ち寄ってみました.
ところが思いもよらないアブ,ブヨ攻撃にたまらず,車に逃げて帰ります.夏の夕方はこれがあるからあなどれない.

2日め.早朝5時起きで,6時からのホテルの朝食.パンのみを食べて,6時半に出発.Nさんの車にMさんと私の3人が分乗.B先生は今日は登山はパスでゆっくり.

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登山口で記念写真.すでに2台も先行車がいる.
登山口には立派な道標や山小屋の主人の廃業への断り書きがあった.
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昨日も訪れた別のルートからの合流地点.
水音が大きくなり,右に大きな滝の一部が見える.谷は深く切れ込んでいる.
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まだここから2時間半のコース.しかし我々は石もチェックしながらなので余計に時間がかかる.
何か水を貯めるような人工的な地形のサイト.そろそろ変はんれい岩の記載のあるあたりか.
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ハシゴとロープが架かる場所.
小さな滝と淵.
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かなり隙間の多い橋.
またきれいな滝が落ちている.
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かなり朽ちて信頼度の低い橋.
やっと山頂直下の巡回路に到達.ここから西にすぐに山小屋.
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立派な小屋が閉じられている.とても残念.地質学会が存続の嘆願書を出したとか.時刻はすでに正午を回っていました.
すでにアルプス的山容がそびえる.赤茶けた石が風化したかんらん岩で赤石の名前の由来.
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重い荷物を置いて,軽装にして,樹林帯の登頂路に踏み出す.
頂上は狭い露岩の上.三角点はない.
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西に尾根沿いに西赤石山方面を望む.地上では最高気温記録下の酷暑.ここはおそらく30度を割る気温だろうと思えるが,涼しくはない.風は心地よいが.
可憐な高山植物.
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足元の風化したかんらん岩. 少しずつ表情が異なるかんらん岩の表面の様子.
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可憐な高山植物その2.
巡回路とはいえ,ところどころ岩雪崩のあとを乗り越えないといけない.雪崩ははるか上から,下までかなりの距離を流れ下っている.
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上を見上げるとこのような感じ.
表面には幌満でも見られた層状の構造が見えたりします.
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さて,何とか権現越に到着.ここから巡検ルートは向こうの山を越えて,いくのですが,ポイント1つを観るために越えるには,もう体力が限界近くなので,ここから降りることに決定.
このあたりにあるという権現越の祠を探したのですが,発見できず.解体されたのかなどと話していたのですが,どうも帰って調べると向こうの尾根のどこかにあるようです.
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ここにも可憐な高山植物.もう午後2時近くとなってしまっています.
ここから夏草に覆われたたよりない道を下る.
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まあ何とか.道標が見つかった.
3人で5L以上持って行っていた水がほとんど尽きたので,源流の水を補給.これで助かった.
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どんどん谷を降りていきます.このあたりまでは何とか元気だった.
途中から四国電力の鉄塔保持の目的で作られたかなりよい道に合流.歩き安くはなったのですが,途中で拾った転石のサンプルなどを入れたザックが重くなり,下りもヘトヘトとなり始める.
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上りの貧弱な木の橋は,山小屋の主人などの手創り,一方帰りに立派な鉄の橋は電力会社の資本が入っている差.150kgという重量制限のプレートがつけられているが安心感が違う.
立派な整備されたひのき林にはいりました.FaceBookで紹介したところ,ある大学時代の友人から,おそらく住友林業の持山だろうと言われました.まるほどさすがに住友城下町だけある新居浜に近い山だと納得.
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夕方6時ころに,ここに降りてきて,もう荷物も置いて動く元気も果ててしまいました.一番元気なNさんが車を置いた地点まで2kmの道を車を取りに歩いて行ってくれました.ありがたい.彼の車でホテルに帰ったときはすでに夕方7時近くになっていました.
脚が重くなったのは,こんな見事な淡緑色のOnphaciteとピンク 色のGarnet,おそらくPyropeを含んだEclogiteの転石がみつかりそれを,何個かリュックに入れたために,下りの道がしんどくなり,精根 尽きてしまったわけです.それでもこんなサンプルが取れて良かった.これにて登山の日記は終了.

さて最終日3日め

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ホテルの朝食は今日はゆっくりごらんの和食を食べれました.春のときよりかなり豪華?になっていた.もちろんGOTOキャンペーン適用で宿泊費は安くなりました.申請は帰ってからWebで行いました.それほど手続きは面倒ではなかった.
さああて朝一で,初日にアブ,ブヨ攻撃にあってあえなく撤退した鹿森ダムサイトにでかけました.虫避けスプレーを振って何とか,
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緑色岩類が多く,ガーネットを含んだ岩石は比較的少ない.藍晶石の有名な産地でもある場所です.今回はかけらは拾うことができましたが.
そんな中でみつけたガーネットを含んだ結晶片岩が右下に見える.
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さて本日のメインの見学先は,この東平とかいて「とうなる」と読む地 区.2番めに開発された別子銅山のかつての本拠になります.バスツアーで狭い道を30分かけて,700mある山腹のこの地区に到着します.ツアーの人数は 5名で成立しますが,前から4名で予約を入れていて,この日は飛び込み客もあり,8名で訪れました.マイクロバスの座席には3密を避ける十分余裕がありま した.
まず展示館でジオラマなどを見て,
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江戸から明治にかけて,まだバス道のなかった時代には,粗銅をかついて 人夫たちが下の町まで運びました.男は45kg,女は30kgをかつぐ大変な仕事です.帰りには日用品を村まで運びあげたとか.先人たちの苦労が目に浮か びます.さてM君がその女性用の30kgをかついでいますが----.
あと定番の展示などがあって,
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外にでると文化遺産が点在する.
その前に,案内者が明治時代に築かれた,山岳鉄道の線路の位置を説明してくれます.はるか遠くにはるかに高く,線路が引かれたそうで一応びっくり.当然資材は全部人間が担ぎ上げたそうですから2度びっくり.
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この山腹に線路を引いたとは本当に驚きです.しかも線路は地上の村には降りずに,終点からはリフトで鉱石を降ろしたとか.当時の苦労が目に浮かびます.
さて長い階段を降りていくと,
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東洋の「マティピチュ」が姿を現しました!上から順に鉱石を選んで,下に落とす構造の,鉱石選鉱場の一連の建物です.
ここまで下ろしてきた鉱石はここから,リフト(バケット)で下に降ろしたとか.電力など使わずに,完全に鉱石の重さの,位置エネルギーだけで駆動されていたというから感心です.
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ガイドはそのレンガの積み方や,リフトを低速度に保つ装置の工夫などを熱弁してくれました.我々のように技術的なことを聴く客はめったにいないとかで,大変喜んでくれました.
こちらの「マティピチュ」本体はレンガではなく,瀬戸内の花崗岩でできています.この石も当然ながら,人がかついで上がったのだの説明.現地の結晶片岩は構造的に弱く,このような建築材には使えなかったという説明でした.
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ガイドの熱弁はまだまだ続きます.この産業遺産は住友グループの研修場所として,銀行や化学,林業などに関わらず,すべての社員が1度は研修に訪れる,いわば企業としての「住友」の原点だそうです.
さて予定の2時間はあっという間にすぎて,地上に降りてきました.町に出るまえに,春に訪れて閉館していた神社の右側にある住友の記念館を訪ねました.
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これが住友の展示館で,見学は無料ですが,館内は撮影禁止でした.銅山の歴史を展示してあるなかなか見応えのある博物館でした.
新居浜市で遅い昼食を取ったあと,最後に関川が瀬戸内海にそそぐところにある,海岸の砂を見学しました.これちゃんと地質学会の巡検コースにある場所です.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/123/7/123_2017.0025/_article/-char/ja
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何の変哲もない,海岸ですが,よく見ると砂が赤い部分があります.
これ巡検ポイントですが,最初よくわからず,かなり探して帰ろうとしたころに,やっと見つけた砂のポイントです.ガーネットが農集しています.
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ということで,今回の巡検の採集物の一部.紅簾片岩や藍晶石を含んだ結晶片岩,海岸砂など.
さらに主目的であった,Omphaciteを含むElcogiteも,転石ですが採集できました.

2泊3日の巡検に参加してくれた,Mさん,Nさん,B先生に感謝です.また行きましょう!


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